通勤等に関する配慮
Q 新型コロナウイルスの感染を防ぐために通勤において、どのような配慮が考えられるでしょうか。
更新日:2020/05/06
1.時差出勤の導入
まず、通勤時刻におけるラッシュアワーを外す時差出勤を導入することが考えられます。
この点、労働契約においては、使用者は労働者に対し、始業時刻及び終業時刻を明示しなければならないとされ(労基法15条1項、労基則5条1項2号)、就業規則を作成する場合も、始業時刻及び就業時刻の記載は必要的記載事項であるとされています(労基法89条1号)。
このため、始業時刻及び終業時刻を変更するためには労働契約の変更について各労働者の同意を得ることが必要であることが原則です。もっとも、多くの会社では、「ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、これらを繰り上げ、又は繰り下げることがある。」という条項が入っていると思います。
現在、政府からは、感染リスクを減らす観点からのテレワークや時差通勤の積極的な活用の促進が要請されていますので、上記の「やむを得ない事情」があるといえるでしょうし、従業員の感染リスクを下げる方策を取ることによって事業者の安全配慮義務を尽くす、という観点からも一方的に時差出勤を命じることが可能であると考えられます。
なお、時差出勤を命じた場合、始業時刻及び終業時刻が変更されることになりますが、通常の所定労働時間を前にずらして早出出勤を命じるか、もしくは遅出を命じただけであれば、残業代の支払いは発生することはありません。ただし、午後10時から翌日午前5時までの間に労働した場合は深夜労働の割増賃金を支払わなければならないことに注意が必要です(労基法37条4項参照)。
2.通常の通勤経路とは異なる方法での通勤
次に、通常の経路が混雑している労働者が、時間がかかっても、混雑が緩和されている別の通勤経路を利用したい、という労働者がいた場合はどうでしょうか。この場合も、従業員が感染者と接触する機会を減らす、という安全配慮義務の観点からいうと、特段問題ないと考えられます。
3.車通勤の実施
そして、接触感染防止の観点から、マイカー通勤を実施することも考えられます。この場合も安全配慮義務の観点から特段問題ないと考えられます。ただし、マイカー通勤の場合、どこまで駐車場代、ガソリン代を負担するのか等について事前の取り決めが必要でしょう。
特に、都心部の交通網が発達した会社ではマイカー通勤を想定した規定がないことが多いため、どこまで費用を負担するのか、事前に取決めをしておくことが重要になると思われます。