顧問チャット活用実例
取締役の利益相反取引に関するご相談
更新日:2023/09/26
気軽に弁護士に相談できる「顧問チャット」でいただいた
興味深い内容をご紹介いたします。
当社は、会社財産として所有していた不動産について、利用しなくなったために、取締役個人に対して売却することを考えています。税理士に相談したところ、以下のようなアドバイスを受けました。
「不当に安く売ると、贈与と解釈されるリスクがある。」
「リスクを避けるために、第三者の査定を受けて、適正な価格であることの準備をしておいた方が良い。」
こういったアドバイス以外に法的な観点から気を付けておくべきことはありますか?
X社様
取締役は会社の業務執行を決定することができますので、取締役が自らの地位を利用して、自らの利益を図り、会社に損害を与える可能性があります。今回相談頂いたケースは典型的な例といえます。
会社の財産を取締役個人に売却する行為は、税理士が指摘するように、取締役が自らの利益のために、会社が取締役に不当に安く売ったりすることができてしまいます。
そこで、会社に不当な損害が加わることを防止するために、会社法は規制を設けております。
まず、上記のような取締役の行為は、会社法356条1項2号の「取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき」に該当すると解されます。これに該当する場合、会社法356条1項は「取締役は…株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。」と規定しております。
すなわち、会社ひいては株主に損害を与えないようにするために、上記の行為を行うためには、株主総会に対して取引の中での重要な事実を開示して、その承認を受ける必要があります。なお、会社と取締役の売買自体が全く禁止されているのではなく、株主総会の承諾を得さえすれば、取引は行うことができます。
また、このような取締役の行為規制は会社組織の形態によって異なる点に注意が必要です。上記の条文がそのまま適用されるのは、あくまで、取締役会が設置されていない会社の話です。
取締役会が設置されている会社について、会社法365条1項は「取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中『株主総会』とあるのは、『取締役会』とする。」と規定しており、取締役会が設置されている会社については、株主総会ではなく、取締役会の承認を得ることによって取引が可能となります。
御社の場合は取締役会設置会社ですので、取締役会の承認を得ることによって、取引を行うことができます。
その際、適正な価格であるかは重要な事実に該当すると思われますので、適正な価格であることの査定を行っておくことは、取引を適法に行うのみならず、取締役会に参加して決議した取締役の善管注意義務違反との関係でも望ましいといえます。
今回は、取締役の利益相反取引に関するご相談をいただき、ご回答を差し上げました。
弁護士に相談せずにインターネット検索等で情報収集をしていると、自社が取締役会設置会社であるにもかかわらず、株主総会の承認という、会社からすれば負担の大きい手続を得なければならないと勘違いしてしまう危険性があります。インターネットは便利ですが、記載されている情報が必ずしも各会社の状況に合致しているかまでの確認はしてくれませんので、是非、弁護士に相談することをお勧めいたします。
顧問チャットは、ネット環境さえあれば、いつでも、どこでもやり取り可能なツールです。チャットワークの活用により、顧問弁護士をより身近に感じていただき、弊所のサービスが皆様のビジネスの加速に貢献できましたら幸いです。
顧問先様の声
顧問チャットをご活用くださっている顧問先様から、サービスへのご意見をいただきました。
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