企業法務コラム
第7回「親事業者からの報復処置の禁止」
更新日:2019/10/27
下請法
弁護士:大武英司
今月号をもって下請法コラムを終了し、次月号からの同コラムにおいては、知的財産法に関するコラムを新たにスタートさせる予定です。
そこで、今月号の下請法コラムではこれまでのコラムでご説明させて頂きました親事業者による「下請いじめ」の禁止をより実効的なものにする「親事業者からの報復措置の禁止」についてご説明させて頂きます。
下請法第4条1項7号は、親事業者が下請法の規定する禁止行為に及んだ場合に、「下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、(親事業者が)取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること」を禁止しております。
これは、下請法が親事業者に対していくら禁止行為を定めたとしても、親事業者が下請事業者による申告を逆恨みし、その優越的地位を利用して下請事業者に対して不利益な取扱いをすることを野放しにしたのでは、下請事業者に申告することを躊躇させ、法が親事業者の禁止行為を定めた意味が失われてしまうことから規定されたものです。
例えば、次の事案をご覧ください。
『下請事業者A社は長年にわたって取引関係にある親事業者B社から、「デフレの影響で原材料費が下落しているためその分下請代金も減額せよ、下請代金は減額した分だけ支払う」などと一方的に通告され、A社に何らの責任がないにもかかわらず、下請代金を減額された。そこでA社が中小企業庁に対してこの一連の事実を申告し、適切な指導をしてもらうように求めたところ、今度はB社から突然取引の停止を通告された。』
いかがでしょうか?
この事例においては、親事業者であるB社は「下請代金の減額」や「支払遅延」といった禁止行為を行っており下請法違反となる可能性があります。そこで、下請事業者であるA社は、中小企業庁に対してB社の違反事実の申告をしたところ、B社がA社との取引停止に及んだため、B社は前述の報復措置禁止の規定にも違反する可能性が高い事例です。
下請法による保護がなければ、A社としてはB社との取引が継続できなくなることを恐れてB社の「下請代金の減額」の要求を甘んじて受け入れざるを得ないという状況が放置されることとなるのが現実なのかもしれません。しかし、下請法はこのような親事業者からの報復措置に対する手当てもしているため、A社としてはそのような取扱いに屈することなく、中小企業庁に対して不利益な取扱いを受けたことを通告して、適切な指導をしてもらうよう求めることができるのです。
これまでご説明してきました禁止事項以外にも親事業者の行為を律する規定が下請法には多数存在します。業務委託関係にある各種取引をされていらっしゃる方にとっては、下請法の存在を知っておくだけでも、攻める際にも守る際にも有効な武器となり得ます。
具体的相談等がございましたら、是非当事務所までお問い合わせ・ご相談ください。
冒頭でも述べましたが、今回で下請法コラムを終了し、次回からは知的財産権に関するコラムを開始致します。今後も同コラムの内容にご注目ください!
監修者
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