企業法務コラム
第6回「買いたたきの禁止」
更新日:2019/10/27
下請法
弁護士:大武英司
今月は、下請法が禁止する「買いたたき」とは何かについて説明させて頂きます。
下請法第4条1項5号では、親事業者の禁止行為の1つとして「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」が挙げられております。
何やら分かりにくい規定ですね。より分かりやすく事例を挙げて説明致します。
「A社は現在、自動車部品を下請業者B社に発注しています。ところが、A社は最近の原油価格の高騰の影響によりB社から従来の発注単価の引き上げを求められています。これに対し、A社は従来の発注単価に据え置いたまま発注しています。」
いかがでしょうか?
この事例において、従来の発注単価のままでは、当該取引の通常の対価と比べて著しく低い下請代金額となる場合、B社と十分に協議することなく、一方的に従来どおりの発注単価に据え置いた場合には、A社の行為は「買いたたき」行為に該当し、下請法に違反するおそれがあります。
以前の同コラムで、「下請代金の減額禁止」について触れましたが、「買いたたき」と非常に似ています。違う点は禁止される行為の対象です。
「減額禁止」は文字通り減額行為を規制しておりますが、上記事例ではA社は発注単価を据え置いたまま発注しているに過ぎず、減額を行っている訳ではありません。しかしながら、親事業者がその優越的地位を利用して下請事業者に対して不当に低い下請代金を押し付けることを野放しにしては「減額禁止」を規定した意味が失われてしまいます。そこで、下請法は、実質的に減額行為と変わらない「買いたたき」をも禁止することとしたのです。
上記の事例に戻りますと、A社としては、下請事業者であるB社と十分な協議を行い、再見積りを取るなど発注単価を見直したうえで合意する必要があります。
万一、A社がこのような対応をとらない場合には、B社としては早目に当事務所や中小企業庁に相談されることをお勧めします。中小企業庁に通報することによって、公正取引委員会により、A社に対して原状回復措置その他必要な措置の勧告が行われる可能性があります。
もっとも、中小企業庁への通報を契機として取引関係の継続が困難になることを懸念して、黙認される方々が多いのも現状です。しかし、通報することにより万一親事業者から不当な報復を受けるようなことがあれば、そのような親事業者は下請法が別途禁止する「報復措置」としての規制を受けることとなります。また、下請事業者としては、公正取引委員会による勧告を求める方が、結局のところ適正な下請代金額による継続取引を確保する実効性が高いと考えられます。
以上が、下請法が禁止する「買いたたき」の内容となります。
ところで、前月号においても告知させて頂きましたが、当事務所では11月26日に、建設業界における法律上の諸問題をテーマとするセミナーを開催する予定であります。建設業をされている法人様・事業主様のみならず、建設業を取引先とされている方々、建設業にご興味を持たれている方々等の積極的なご参加をお待ちしております!
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