企業法務コラム
行政が保有する情報の取得
更新日:2019/10/27
1. はじめに
今月は、行政が保有する情報やその取得方法についてお伝えします。
我々弁護士は、日々様々な事件のご相談を受け、そうした事件が、法律に照らした場合、どのように解決されるべきかを考えます。その際、まず、法の適用の前提となる事実関係を調査する必要があり、関係資料を収集します。
関係資料は事案により様々ですが、行政が保有する情報が優良な手掛かりとなるケースが多々あります。したがって、行政機関から的確かつ迅速に情報開示を受けることが証拠収集の実効性を確保する上で重要な位置を占めます。
2. 典型的な行政文書
行政文書のうち、何が事件解決に資するかは事案毎に異なりますので、一概に何が役に立って、何が役に立たないということはできません。
ただ、たとえば、不動産の問題に関しては、法務局で取得できる全部事項証明書、建物図面・配置図、ブルーマップ(住所表記と地番との対照関係が表示された地図帳)や、市役所で取得できる固定資産評価証明書の存在が、事実関係の解明に資することが多いです。自動車の所有関係が関わる事件については、運輸支局で取得できる登録事項等証明書が役立ちます。また、相手方の世帯情報を知る必要があるのであれば対象者の住民票が、親族関係の情報が必要なのであれば戸籍謄本が、住民票上の住所地の履歴が必要なのであれば戸籍の附票が役立ちます。
3. 開示手続
行政の保有する情報のうち、たとえば不動産全部事項証明書や建物図面・配置図等は、当初から開示が予定されているものであり、特段の手続を要せず、法務局で所定の用紙に記入するだけで誰でも取得できます。
他方、元来開示が予定されていない行政文書を取得する場合、基本的には、自己の個人情報に関する開示請求(行政機関個人情報保護法もしくは個人情報保護条例に基づく開示請求)、もしくは、それ以外の行政文書の開示請求(情報公開法もしくは情報公開条例に基づく開示請求)のいずれかを行うこととなります。前者は行政機関が保有する本人(開示請求者)に関する情報開示を求める手続であり、後者はそれ以外の行政文書の開示を求める手続です。ただし、すべての行政文書を開示できるわけではなく、第三者の個人情報や高度の行政秘密に関わるものは開示できません。
その他、弁護士の職権や裁判所を経由した手続を用いて取得する方法がありますが、この場合でも必ずしもすべての行政文書を開示させられるわけではありません。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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