企業法務コラム
刑事コラム特別回「99.9%の有罪率と2件の無罪判決」
更新日:2019/10/27
刑事
弁護士:茂木佑介
多くの皆様方が新聞・テレビ等でご認識くださっているとおり、平成29年3月24日、鹿児島地裁加治木支部に係属中であった窃盗被告事件において無罪判決を獲得することができました。これだけでも大変センセーショナルな内容でしたが、実は、上記判決に遡ること2か月、平成29年1月26日にも鹿児島簡易裁判所に係属中であった自動車運転過失致死傷被告事件において無罪判決を獲得していました。
一般的に日本の刑事司法制度において、有罪率が99.9%ということを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。すなわち、ひとたび検察官に起訴をされてしまうと、99.9%は有罪となり、無罪になる確率は0.1%しかないということです。もちろん、有罪率99.9%の内、その殆どは事件の内容に争いがない「自白事件」と呼ばれるものですが、それを差し引いても、無罪判決を獲得することは容易ではありません。
このような状況にあるにもかかわらず、2か月間で無罪判決を2件獲得するという驚異的な結果がでたことを踏まえ、今回のコラムでは無罪判決の大まかな内容についてご紹介させていただきます。
1件目の自動車運転過失致死事件は、「被告人運転の二輪車が左折に備えて左側車線に車線変更をしようとしたところ、同左車線を進行中であった被害者運転の普通自動車に接近し(ただし非接触)、被害者が衝突を回避しようとしたところ運転操作を誤り、そのまま道路外の防護柵等に衝突して死亡した」という事案です。なお、本件の特殊事情として、被害者が制限速度を時速40㎞から50㎞程度超過しているという事情がありました。
本件では、特に被告人が後方確認義務を果たしていたのかが問題となったのですが、当職は、上記特殊事情があったことを理由に、最高裁判例等を引用しながら「被告人の過失や因果関係が無い」旨の主張をしていきました。結果的に、裁判官は「被告人には過失が無い」という当職の主張を概ね認め、無罪判決が言い渡されました。
2件目の窃盗事件では、各メディアでもご紹介されていたとおり、窃盗行為そのものについては争いが無かったものの、当該被害品である発泡酒と、同発泡酒が搭載されていた軽トラックが捜査機関によって用意されたものでした。そこで、当職は、「本件自体が捜査機関によって作出された、いわば『おとり捜査』に該当し違法である」旨の主張をしていきました。結果的に、裁判官は、本件捜査が「おとり捜査」の一類型である「なりすまし捜査」にあたり、違法であると認定するのみならず、同捜査がいわば「国家が犯罪を誘発し、捜査の公正を害する」として根幹となる証拠を排除し、無罪判決が言い渡されました。
1件目は、刑法的側面から問題となり、2件目は刑事訴訟法的側面から無罪になるか否かが大きく問題となりましたが、結果的に2件とも無罪が言い渡される形となり、当職としても感無量の想いです。当事務所では、今後も当職のみならず、各弁護士が積極的に刑事事件にも取り組んで参りますので、ご自身の問題のみならず、知人の方で刑事事件が問題となっている場合は、ご一報いただければ幸いです。
監修者
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