企業法務コラム
新型コロナウィルスと解雇
更新日:2020/06/17
[ニュースレター78号掲載]
1.緊急事態宣言が解除され、少しずつ経済活動が再開しています。鹿児島の街も人通りが増え、商店街も活気 を取り戻しつつあるように見えます。しかし、新型コロナウィルス関連の解雇や雇い止めが見込みも含めて全国で2万人を超えたともいわれています。このように、緊急事態宣言による経済活動の停止は雇用関係に大きな影響を与え ているといえます。ただし、新型コロナウィルスの影響を受けているからといって、当然に解雇や雇い止めを有効に行えるというわけではありません。そこで、本コラムでは、正社員の解雇について解説したいと思います。
2.まず、期間の定めのない雇用契約を締結している社員(いわゆる正社員)の解雇については法律上の制限があり、解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効」(労働契約法16条)となります。 そして、売上の減少等の経営上の理由で人員削減による解雇(いわゆる整理解雇)を行う場合には、従業員の落ち度による解雇ではないため、厳格に解雇の有効性が判断されると考えられます。整理解雇の有効性については、以下の4つの要素を考慮して判断します。
- ・人員整理の必要性
- ・解雇回避努力義務の履行
- ・解雇する従業員選定の合理性
- ・手続の相当性
3.具体的に新型コロナウィルスによる売上減少を理由とする解雇ついて考えてみると、新型コロナウィルスによる 売上の減少等が存在する以上、人員整理の必要性については認められる可能性が高いと考えられます。しかし、解雇回避努力を尽くしたかは、経費の削減、役員報酬の削減、新規採用の見直し、配置転換、休業、残業の抑制、賃金等の引き下げ、希望退職の募集等、 解雇を回避する為にいかなる手段を講じたかを検討しなければなりません。また、公的支援を受けられる可能性があればその利用も検討する必要があります。さらに、解雇する従業員の選定については、勤務成績、年齢、勤続年数等を考慮して考える必要があります。最後に、従業員に対して、解雇の必要性、解雇回避の措置、解雇対象者の選定方法及び退職の際の条件等について誠実に説明することが必要です。
以上のように、新型コロナウィルスの影響により売上の減少等の業績悪化を理由に解雇という選択をする場合には、慎重な判断が求められます。そのため、従業員との雇用契約を継続すべきか検討する際は、是非一度ご相談いただければと思います。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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