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企業法務コラム

同一労働同一賃金に関する3つの最高裁判例について

投稿日:
更新日:2020/11/27

法改正

弁護士:大武 英司

来年4月から全事業主に同一労働同一賃金に関する改正法が施行されます。そして、今年10月に同一労働同一賃金をめぐり労働者が使用者を相手取って訴えた事件につき、最高裁判所が相次いで判決を出しました。
同一労働同一賃金の問題は、いわゆる非正規労働者が正規労働者の労働待遇と比較してその差異が不合理であるとして、使用者に対してその差額相当額を求めるという態様で紛争化します。

相次ぐ最高裁判決の結論としては、休暇制度や各種手当の有無についての待遇格差は不合理とし、賞与や退職金の有無については不合理とまではいえない、という内容でした。しかし、この問題はこの結論だけ取り上げて、賞与や退職金には差異を設けてよく、それ以外は差異を設けてはならないという議論をするのは間違いであるという点に注意が必要です。
最高裁の判示は、いずれも当該事案における運用として合理的か否かを判断しているに過ぎず、一般論として判示しているものではないことを強く意識する必要があります。

法律上、同一労働同一賃金に反するか否かについては、当該労働者の、1業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、2職務の内容及び配置の変更の範囲、3その他の事情、を総合的に考慮して判断される旨明記されています。そのため、各判例もこの考慮要素に則して、当該会社ではどのような内容になっているかを事実認定したうえで、結論を出している点で異なるものではなりません。

そうすると、ただ単に就業規則の定めがどうなっているのかを確認し、その内容を修正するのみでは同一労働同一賃金への対応としては足りず、むしろ、労働者の雇用形態ごとに待遇格差を維持するために、上記1ないし3の要素につき差異を設け、「だからこそ待遇格差は合理的である」との説明がつけられることが重要です。

また、正社員登用制度を充実させ、有期契約労働者やパートタイマーであっても、一定の条件を充たせば正社員への登用の途が用意されているということも使用者側に有利に働きます。同制度があれば、非正規労働者に対し、「正社員への途を希望することにより、同じ待遇をうけることが可能」との論理が成り立つためです。

弊所におきましては、同一労働同一賃金への対応策につきましては、近時、皆様から多くのご相談を頂いております。対応策にご不安をお持ちの事業主の皆様は是非弊所までお問い合わせください。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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