企業法務コラム
弁護士から見た休憩時間の問題点
更新日:2024/08/20
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、休憩時間の問題点についてです。
はい、今回は弁護士から見た休憩時間の問題点について学んでいきます。そもそも、休憩時間には何か定義があるのですか。
はい、「休憩時間とは、単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間」(昭22.9.13発基17号)とされています。
休憩時間にも定義があるのですね。「作業に従事しない手待時間」は「休憩時間」に含まれないのですね。では、「手待時間」とは、具体的にどのような時間のことを指すのですか。
簡単にいうと、休憩中であっても必要に迫られた際には業務に従事しなければならない待機時間のことになります。例えば、工場の溶鉱炉の管理を任された従業員のケースを考えてみましょう。その従業員は、休憩中も不規則に起こる原料切れへの対処のために、ランチを食べる間も溶鉱炉の近くで待機していなければなりません。この場合、従業員は、原料切れが起きない間はただ待機していればよいのですが、原料切れが起きた場合には、休憩中であっても原料補給という業務に従事しなければなりません。これは、「手待時間」にあたるので、「休憩時間」には含まれないことになります。
一見するとお昼時にランチを食べながら休憩しているように見えても、「休憩時間」に含まれないケースもあるということですね。では、使用者としては「休憩時間」を付与していたつもりであったにもかかわらず、実際には「手待時間」となってしまった場合にも、何か問題が生じるのですか。
その場合は、適切な「休憩時間」を付与していなかった結果、その分の残業時間が発生してしまうこととなります。そして、その残業時間分の賃金が発生することはもちろんのこととして、法定外残業となった場合は割増賃金の支払いを請求されることとなります。
使用者は各従業員らに対して「休憩時間」を適切に付与しないと、想定外の債務を負担する羽目になるのですね。そういえば、町の小さなクリーニング屋さんやガソリンスタンドを見ると、従業員が一人しかいない店舗もありますが、そのような店舗では「休憩時間」の確保は難しそうですよね。
その通りです。一人勤務の店舗従業員は、顧客対応の関係で、ついつい休憩中も業務が発生しがちです。このようなケースですと、明確に時間を区切って一時的に完全休店させるなど、休憩時間の自由利用が保証されていたと認めるだけの特段の事情が無い限りは、「手待時間」と評価され、「休憩時間」と評価されない可能性が高いです。
従業員が一人しか勤務していない店舗については、残業代を支払うか、思い切って完全に休店させる必要があるのですね。それでは、別のケースにはなりますが、使用者が業務を命じていないのに、従業員が休憩時間中に業務に従事した場合は、どうなるのですか。
その場合も、使用者が明示的に業務を行わないように指示していなければ、業務遂行を黙認していたものと評価されて、適切な「休憩時間」を与えなかった(=残業が発生していた)と評価されてしまうリスクがあります。仮に、残業が発生していたと評価されてしまった場合、使用者は残業代請求を受け、場合によっては割高な残業代を支給しなければならなくなります。
使用者が指示していないのに、従業員が休憩中に勤務した場合に未払賃金の支払義務を負わされてしまうのは、酷な気がします。
確かに、使用者にとっては中々辛いところです。しかしながら、使用者は従業員の労働時間を適切に管理・把握すべき義務を負っていますので、従業員が休憩時間中に勤務することが無いように監督する必要があります。
そうなのですね。ほかにも「休憩時間」について注意すべきことはありますか。
ええ、「休憩時間」といえるためには、従業員がその時間中に自由に外出できるものでなければならないともいわれています。結局、労働法上の「休憩時間」というのは、従業員が、完全に業務から離れることができる時間ということになります。
「休憩時間」にもいろいろな注意点があるということが分かりました。今日もありがとうございました。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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