企業法務コラム
「休職を認める・認めない」で気を付けるポイント
更新日:2024/11/19
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、休職の認可についてです。
従業員の方が病気になって療養したいので、会社をしばらく休みたいと言ってくることがあります。これは「休職」になるのでしょうか。
結論から言うと、業務でけがをしたような場合ではなく、業務外での病気等であれば、休職扱いになります。ただし、休職は法律で定められている制度ではないので、就業規則に定めておく必要があります。ほとんどの会社では、就業規則に休職の規定があるはずです。
会社が従業員の様子を見て、休職命令を出してもよいのでしょうか。
その点も就業規則に定めがあれば可能です。 ただし、注意点があります。就業規則で、「業務外の疾病による欠勤がXカ月を超えても、なお治療を継続する必要がある場合」という記載になっているケースです。
なぜでしょうか。判断基準として明確と思いますが…。
まず、短期間の欠勤を繰り返すパターンに対応できません。次に、本人に自覚がなく、会社として休職を勧めても、本人が「大丈夫です」と言って出勤してしまうパターンにも対応できません。後者は、精神的な問題を抱えているケースでありがちです。上記の例では、「誰が最終的に判断するのか」が明確ではありません。
会社の判断で休職が相当と考えても、休職命令を出せなくなってしまうということですね。
その通りです。
それ以外の点で注意点はありますでしょうか。
先ほどのお話とかかわりますが、休職を決める最終的な権限は、会社に持たせるべきです。例えば、残念なケースではありますが、従業員から休職の申出があった場合でも、いわゆる詐病の可能性が疑われることもあります。そのようなケースでも、最終的に誰が判断するのかという点が重要なポイントになってくるためです。
休職期間中は、給料は支払われるのでしょうか。
基本的には、仕事をしていない期間については、支払う必要がないのですが、就業規則に明示しておくほうがよいです。
休職するときに、会社から「医師の診断書を提出すること」を求められるケースがありますが、これは問題ないのでしょうか。
就業規則に定めておけば、問題ありません。実際にも、会社として、従業員から休職の申出があった場合には、それが正しいかを判断する一助にはなります。ただし、最終的には、診断書はあくまでも判断の一資料にとどめておき、会社の判断で決められるようにする必要があります。特に、メンタル系の不調は、物理的なけがと違って、医師の方でも判断が分かれることがあるためです。
確かにそうですね。会社が休職命令を乱発するのは論外ですが、実際には、判断に迷うケースも多そうですので、会社が最終的な決定をできるようにしておくことが大切ですね。
念のために言いますと、休職はあくまでも、「業務外」での原因に限ります。会社の業務による場合には、当然ながら、会社に責任がありますので、労災保険等で補償金が支払われます。会社の業務に起因するケースで、この休職規程を使ってしまいますと、「労災隠し」にもなってしまいますので、絶対にやめるようにしてください。
休職期間は、どの程度に設定することが良いでしょうか。
この点は、会社ごとに決めてよい事項です。あまりに短い期間で設定しても、すぐに休職期間が満了してしまうことになりますので、1ヶ月では意味がないことになります。他方で、長すぎても、会社としてはその間の代替人員の確保もしなければならないので、その支障になってしまうと、それも困ることになります。個人的には、3ヶ月から6ヶ月程度でよいと思います。もう1つの案としては、勤続年数の長い方については、高齢になるにつれて治療に時間がかかることもあるでしょうから、長めの期間を設定するという方法もあります。
よくわかりました。休職といっても、いろいろと考えるべきポイントがありますね。このあたりは、就業規則のひな型をそのまま使ってしまうことが多そうですが、見直してみます。
監修者
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