企業法務コラム
パワハラ防止措置の義務化に弁護士が解説
更新日:2022/07/12
1. 初めに
いわゆるパワハラ防止法、(正式名称は「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」といいます)が、2019年5月に改正され、これにより企業にパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます)の防止対策を講じることが義務化されています。中小企業については、2022年4月1日の施行とされています。そのため、すでに義務化されているセクシャルハラスメントやマタニティハラスメントの防止措置義務と同様に、2022年4月1日までに中小企業においても、パワハラを防止する対策が法的に義務づけされることになります。
2. パワハラ防止法で求められるパワハラ防止対策について
2-1. パワハラとは
まず、パワハラ防止法では、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される」ものに対して対策を講じることを義務づけています。そのため、この定義を満たすものが、いわゆるパワハラにあたるといえます。
なお、パワハラに当たる例などは、厚生労働省のホームページでも説明がなされていますので、参考にしていただければと思います。
2-1-1. 義務化される防止対策の内容
次に、同法では、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないこととし、その具体的な内容について、厚生労働大臣が指針を定めています。同方針では、①事業主の方針の明確化及びその周知・啓蒙、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応及び④併せて講ずべき措置(プライバシーの保護等)が挙げられています。
3. 各防止対策の具体的内容について
3-1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓蒙について
具体的内容として、パワハラを行ってはないということを就業規則に規定したり、職場内の社内報など啓蒙していくことが考えられます。また、パラハラを行った者に対しては、厳しい態度でのぞむということも周知徹底していくことも求められます。そのほか、パワハラと聞いて何も指導ができなくなるという意見も多いことから、研修などでパワハラとは何かについて学ぶことも有益です。
3-2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備について
ここでいう必要な体制としては、相談窓口を設定し、相談体制を整えることが必要となります。そのため、相談マニュアルを作成や対応に関する研修などを行うことが考えられます。この研修については、弁護士などに依頼することも選択肢です。パワハラへの対応は初動が大切ですので、その初動を担当する従業員の教育や専門家への相談体制を整えておくことは、パワハラに対する企業の対応で事態を悪化させないためにも重要といえます。
3-3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応について
企業は、パワハラについて相談を受けた場合には、まず、その事実関係を迅速かつ正確に確認することが必要です。その上で、パワハラの加害者及び被害者に対してそれぞれ適正な措置を行うことが求められます。加害者へは、就業規則にのっとり処分を行い、被害者へは、被害回復や就業環境への配慮を行うことになります。
また、パワハラへの対応については、その事案の解決だけでなく、同様の事案が生じないようパワハラに関する企業の方針を周知啓蒙しなければなりません。
3-4. 併せて講ずべき措置について
これまでの3つの措置に加えて、パワハラに関する相談は相談者及び行為者のプライバシーに関するものであるため、相談に応じる際にはプライバシーに配慮する必要があります。また、パワハラについて相談したことや事実確認に協力したこと等を理由に企業として不利益な扱いをしないことを従業員に周知・啓蒙することも求められています。
4. 最後に
以上のとおり、企業に求められるパワハラ防止対策について簡単に説明いたしました。防止措置は、企業の実情に合わせて、実行可能性のあるものにしなければなりません。また、実際に、労働者からパワーハラスメントがあった際の対応についても、どのようなことを労働者や関係者から聞き取れば良いのか、事実が確認できた場合にどのような処分をするかなど、検討すべき事項も様々です。パワーハラスメントの問題は労働者の労働環境、ひいては生産性にも直結する事情であることから、企業にとってその対策は必須です。どのような体制を会社で構築するか、実際にパワハラが生じた場合の初動対応などに悩まれた際は、是非当事務所にご相談いただければと思います。
監修者
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