企業法務コラム
試用期間について
更新日:2024/09/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、試用期間と本採用拒否についてです。
今回は、試用期間がテーマです。アルバイトでも、正社員でも、試用期間の話はよく聞きますね。
試用期間とは、雇い入れた従業員の能力や適性を評価して本採用とするかどうかを判断するための期間をいいます。
試用期間は、どのくらいの期間で設定するのがよいのでしょうか。
試用期間の長さは、一般的に、3ヶ月から6ヶ月を設定することが多いようです。1年などの長期にわたるものは無効とされる場合があります。
たしかに、能力や適性を評価するのに、1年も様子をみるのはちょっと長すぎる気がしますね。
1年もあれば、通常、人事考課の対象期間に達するほど長いということですからね。試用期間の考え方において、最も重要なことは、試用期間満了による本採用拒否はあくまで「解雇」であるということです。
「解雇」であるとは意外ですね。本採用拒否と普通解雇との差はどこにあるのでしょうか。
判断基準が普通解雇よりは少し緩やかになります。これは、試用期間の性質が、解約権を留保された労働契約であると考えられるからです。もっとも、「解雇」の客観的合理的理由と社会的相当性が要求されることは同じです。
判断が緩やかになる例は、どんなものが考えられるのでしょうか。
本採用拒否では、採否決定までの段階で十分な調査ができない事由であれば、拒否事由になってきます。具体的には、採用当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、その者を引き続き雇用しておくことが相当であるかという点から判断されます。
よくある例としては、①従業員として協調性に欠け、何度も注意しても全く改善する姿勢を見せず、将来にわたって改善の見込みがないケース、②面接時に求められた能力(英会話能力やパソコンスキル)がなかったケースです。
指導・教育で改善可能なケースにまで本採用拒否が認められるわけではありませんので注意が必要です。
従業員の改善の見込みがあるかないかを判断するのにもう少し期間が欲しい場合はどうしたらよいですか。
試用期間の延長がありえるところです。ただし、裁判例では、①就業規則に定めがあるか、②本採用拒否できる事案で解雇を猶予するといった期間延長の合理的理由がない場合は延長が許されないとされるケースが多くあります。
裁判例では、試用期間は解雇規制が緩くなる期間ですから、延長に延長を重ねて普通解雇を免れることで労働者の地位が不安定化することを避けることが想定されていると思われます。
これまで、本採用拒否のケースを見てきましたが、試用期間満了前に解雇することはできるのですか。例えば、3ヶ月間の試用期間のうち、1ヶ月目で解雇する場合です。
不可能とはいいませんが、能力・適正を見る期間として試用期間は存在します。期間途中での解雇は本採用拒否よりも解雇の判断基準が厳しくなるため、会社側としては試用期間中だけは様子をみるというのが無難な運用となる場合が多くなります。
ところで、最初の数ヵ月は有期雇用契約で、途中から無期雇用契約にするといった運用がある会社もあると思います。経営者からすると、試用期間より期間満了による雇止めの方が便利であるとして、有期雇用契約とする手法もありうるところです。これは試用期間とは異なるのですか。
これは鋭い質問ですね。裁判例は、その実態として能力・適正を判断・評価する目的で有期雇用契約とされた場合は、原則として試用期間と解しています。
例外的に、期間満了により雇用契約が当然に終了する明確な合意がある場合はこの限りではありませんが、現実的に想定されるケースはあまり多くありません。
なるほど。やはり試用期間としての実態をみられるのですね。
試用期間については、一般に思われているよりも慎重に考えなければなりませんね。
世間一般では、本採用拒否はよくあることです。
それゆえに紛争になりやすくもあり、思わぬ結果を招くことがあります。
普通解雇と違って、試用期間に関する判断は、3ヶ月~6ヶ月などと時間が限られていますから、早めに弁護士に相談しておくのが危機回避につながりますよ。
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