企業法務コラム
無期転換制度とはどのような制度か
更新日:2023/12/22
1. 無期転換制度とは?
会社や事業主に雇用される労働者の中には、雇用期間に定めのある契約(有期労働契約)による場合があります。例えば、1年間の雇用契約を取り交わし、期間満了によって契約を更新するような場合がこれに該当します。
ところが、一定の要件を充たす場合、労働者が希望すれば、使用者の意思とは無関係に、有期労働契約が、期間の定めがない契約(無期労働契約)となる制度が存在します。これが無期転換制度です。そして、無期労働契約に転換するよう使用者に求めることができる権利を無期転換権といいます。
2. 使用者が無期転換に応じなければならない場合とは?
労働者が一定の要件を充たす場合に、その労働者が無期転換権を行使すると、使用者はその意思とは無関係に、その請求に応じなければなりません。
具体的には、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときに、無期転換に応じなければなりません。
3. 無期転換権の行使をされるとどのような雇用関係になるのか?
無期転換権を行使されると、その労働者との間で交わされた雇用契約の契約期間の定めはなくなり、無期雇用契約となります。その他の労働条件は、別段の定めがない限り、従前の有期労働契約の内容と同一となります。すなわち、原則として、契約期間の定めがなくなるほかは、労働条件に変更を来たしません。
4. 無期転換権が行使される前に「雇止め」をすることができるか?
無期転換権は、有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える場合に行使可能な権利です。そこで、無期労働契約を希望しない使用者が、労働者の契約通算期間が5年を超えないうちに有期雇用契約の更新を拒絶することで、無期転換を回避するという方法が理論上は考えられます。
有期労働契約の更新を拒絶することを雇止めといいますが、このように無期転換を回避する目的でなされる雇止めは原則として認められません。仮に雇止めをしたとしても、後になってその雇止めの有効性が争われると、雇止めをした日から裁判(または審判)が確定した日までの間の賃金を支払わなければならないなど、使用者側は非常に大きなリスクを負うこととなります。
5. あらかじめ無期転換権を行使しない合意等を結ぶことは可能か?
有期契約労働者に無期転換権を行使されないよう、使用者が労働者との間で「雇用契約中、無期転換権を行使しない」旨の合意をすることも理論上は考えられます。しかしながら、このような合意は原則として無効となります。なぜなら、法が有期契約労働者に対して無期転換権を認めた意味がなくなってしまうためです。
もっとも、新規に採用する有期契約労働者について、雇用契約書に「更新回数は●回を限度とし、●回目の更新はない」との条項や、「本契約は期間満了をもって終了し、契約更新は一切行わないものとする」との条項を設けている場合には、使用者がそれらの運用を徹底していれば有効となり得ます。
監修者
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