企業法務コラム
復職可能性の判断に関する法的問題点
更新日:2024/11/06
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、復職可能性の判断についてです。
休職していた従業員から復職の申請が提出されたときの対応について教えて下さい。
休職は、ある労働者に就労不能な事由が生じた時に、労働契約は維持しながらも労務提供義務を免除する制度と言われています。会社が復職を認める場合としては、「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したとき」ということが基本的な考え方となります。
心身についての専門家ではない会社での判断は難しそうですね。
そうですね。休業開始後、休業中のケアを経て休職期間が満了した場合、復職が可能かどうかの判断が必要となりますが、その期間に診ていただいた主治医に説明し、復職できるかの意見を貰うことも大切です。会社の状況を知る医師の判断を踏まえ、会社による職場復帰の可否の判断をして、可能であれば復職して復帰支援と復帰後のフォローアップ、不可能であれば自然退職又は解雇、という流れに進みます。
主治医との連携も必要ですね。職場の復帰可否について判断をする基準はありますか。
明確な基準を定めることは難しく、総合的な判断をケースごとに行うこととなります。労働者の業務遂行能力が未だ前のレベルまでは完全に改善していないことも考慮した上で、職場の受入れ制度や態勢と組み合わせながら判断します。
例えば、どのような点を考慮したほうがよいですか。
例として、復職の意欲を示しているか、一人で通勤ができるか、設定された勤務日や時間の就労を継続できるか、長時間立位による作業やコンピュータ作業等の従前行っていた業務ができるか、疲労が十分回復するか、睡眠リズムが整って日中の業務に支障が無いか、必要な注意力や集中力が回復したか等を考慮することになります。
しかし、「従前の職務」を通常の程度に行えないときに、休職後に人員を補充したために、人手が足りていて、別の職務が無いこともありますよね。
そうですね。職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結していた場合にて、たとえ現に特定の業務について労務の提供ができないとしても、配置できる可能性がある他業務が存在し、その労務の提供を申し出られているときには、能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情および難易等に照らして、より慎重に復職可能性を考えなくてはいけません。
なるほど。復職できる状態には無いと判断した結果、退職や解雇とした場合に紛争が生じることもありますよね。
はい。休職前の従前職務に復職出来るまでは回復していないものの、別の職務内容であれば就業可能な場合について、直ちに復職不可能と判断することに警鐘を鳴らす裁判例もあるため、解雇等を考えるときには、一度事前に、弁護士に相談をしてほしいです。
医師が作成した診断書にて「就労は可能と判断する」などと書いてあっても、復職可能性をその診断書だけから判断することにはリスクがあるのですね。
医師による医学的所見も、同一事案につき、医師によって全く異なる判断がなされることも少なくありません。特に、確定診断の出来ない精神的な傷病による場合にはその傾向は顕著に見られるため、医師の診断を漫然と受入れるのではなく、時には懐疑的に、その作成経緯を慎重に検討することも大切です。
実際の就労状況を熟知する会社の立場からも、多角的な視点から検討をしなくてはならないことがわかりました。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
- 本店所在地
- 〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
- 連絡先
- [代表電話] 03-6432-9783
[相談予約受付] 0120-100-129 - WEBサイト
- https://www.kotegawa-law.com/