企業法務コラム
物品売買契約について
更新日:2024/09/17
1. 物品の売買契約について
物品の売買契約は、企業だけでなく個人にとっても最も馴染みのある契約の一つであり、売主が目的物の所有権を買主に移転し、買主がこれに対して代金を支払うことを内容とする契約です。本ページでは、弁護士の視点からこの物品売買契約について閲覧者の方に有益と思われる情報を提供いたします。
まず、物品の売買においては、原則として、当事者が自由に契約内容を決定することができます。そのため、民法や商法の規定と異なる合意をする場合には、その内容を契約書(文書)に記載して明確化する必要があります。
加えて、当事者間で継続して売買契約が行われる場合には、個々の取引に共通される基本的な取引条件について契約を締結することもあります(以下、このような契約を一般的に「基本契約」といいます)。このような基本的な視点を踏まえて、一般的な物品売買契約は、以下のような構成を取ることが多い。
2. 一般的な物品の売買契約の構成
2-1. 前文
売主と買主、つまり契約の当事者が誰か(誰と誰を拘束する契約か)を明らかにします。
2-2. 物品売買の概要
以下のような項目を規定します。
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売買の目的物
売買の対象となる目的物を特定する必要があります。
動産の場合、不動産とは異なりその特定方法が様々であることから、目的物の特定が不十分な場合、トラブルになる可能性が高まります。そのため、対象物品の名称、種類、製造番号、単価、仕様及び規格等をできるだけ具体的に特定して、目的物に関する両当事者の認識に齟齬が生じないようにする必要があります。
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売買代金
売買契約において、売買代金は重要な事項です。そのため、金額については明確に契約書に定めておく必要があります。また、消費税の課税対象であるか否か、課税対象であれば消費税額、代金の支払期限、支払方法(振込み・手形など)等についても明確化することが重要となってきます。
なお、基本契約の場合には、締め日を設定し、支払日を定めることもあります。
2-3. 個別契約
基本契約の場合には、基本契約とは別に個別の売買契約を締結します(以下「個別契約」といいます)。そして、個別契約の中で、目的物、代金及び引渡し等について具体的に決定します。そのため、個別契約の成立方法や個別契約で定める事項を規定しておく必要があります。
また、基本契約と異なる事項を個別契約で定める場合に、基本契約と個別契約のどちらが優先するかについて明示しておくことも重要です。
2-4. 引渡し
物品の引渡しは、以下に述べる「危険負担」の移転時期とも関係するため、売主が物品を買主のところに持参するのか配送するのか、買主が受け取りにくるのかなど具体的な引渡し方法について明示することが必要です。
また、物品の引渡しに際する費用(送料等)を伴う場合には、その費用をどちらが負担するのかについても明示することが望ましいといえます。
2-5. 検査
買主は、目的物の引渡しを受けた後、その目的物が予定していたものと相違ないか、瑕疵や数量不足がないか等を確認しなければなりません。
また、売主は、目的物の検査が行わなければ自身の義務が履行されたか否かについて確定できないことから、検査が間違いなく行われるよう検査期間や検査結果の通知方法についても定めておく必要があります。
その他にも、目的物が機械の場合は、仕様が定められていることもあることから、買主は目的物が自身の求めていた仕様に合致するかも確認しなければなりません。そのため、その確認方法や確認の期限についても定めておくのが望ましいといえます。
2-6. 所有権
所有権がいつ移転するかは、売主が買主に対する売買代金請求権を保全するために重要な意味を持ちますので、いつ所有権が移転するかを明示することが大切です。
2-7. 瑕疵担保責任
原則として、目的物を引き渡した後に瑕疵が発見された場合には、売主は法律の規定に従い、買主に対して契約不適合責任(法改正により「瑕疵担保責任」から名称が変わっております。)を負うことになります。もっとも、契約不適合責任は当事者間の合意により、変更することが可能です。そのため、契約不適合責任の内容(瑕疵の修理請求、代替品の納入を求める請求、契約解除及び損害賠償請求等)、責任の範囲及び責任追及の期間等について、当事者間で特約を定めることも選択肢の一つといえます。
引き渡された物品が契約上不適合に該当するか否かを明確にするためにも契約書では、契約の目的・対象物品・保証されるべき性能・売買代金の額(の計算方法)などを二義を許さないよう具体的に特定しておくことが重要となります。
2-8. 危険負担
売買契約締結後、目的物が引渡しまでに不可抗力(社会的に想定される規模を超える天災や戦争など合理的にみて回避困難な外部的な出来事)により滅失又は毀損する場合もないとはいえません。そのため、このような場合に、売買代金の支払義務や物品の引渡し義務をどのように扱うかを定めておくことが必要となります。
2-9. 品質保証
買主が売主に対して、自身の要求する品質に適合する目的物を引き渡すよう定めるものです。品質が重要となる場合には、このような規定を契約書に盛り込むことになります。
2-10. 製造物責任
目的物に欠陥が存在し、その欠陥により第三者に事故が発生した場合に、売主及び買主がどのような割合で責任を負うかを定めることもあります。
2-11. 解除及び期限の利益喪失
基本契約の場合、複数の個別契約が存在し、売買代金は後払いとなることが一般的です。そのため、売主としては、代金が回収できなくリスクを最小限にするため、買主の信用状態が悪化した場合に期限の利益を喪失するといった規定を定めることが重要となってきます。
また、信用状態が悪化した場合に、基本契約を継続することはリスクを伴うことから、同時に基本契約を解除できると定めることになります。
2-12. 契約期間
基本契約の場合、契約関係が一定期間継続するため、その期間を明示する必要があります。また、契約期間の更新についても定めることがあります。
2-13. その他
以上の条項に加えて、損害賠償責任、秘密保持義務及び裁判管轄について規定することもあります。
3. 売買契約書と印紙税
売買契約書のうち、不動産や無体財産権(特許権や著作権等)を目的とする売買契約書は印紙税の課税対象となります。
また、継続的取引の基礎となる契約書(基本契約の内容を記載した契約書)も印紙税の課税対象となります。
印紙税の課税対象となる契約書を作成する際は、必ず印紙税の貼付が必要となります。
印紙が貼られていない場合は、いわゆる脱税となり、追徴等ペナルティの対象となります。
なお、印紙はただ単に貼るだけでなく消印を押す必要があります。これは、「消印」とは印紙とその台紙(印紙を貼る書面)の両方にかかるように印影がかかるように押印することを言います。これは、印紙の使い回しを阻止することを目的とする行為です。
4. まとめ
以上のように、物品売買には、特有の問題が存在します。また、民法や商法の規定と異なる規定を契約書に盛り込む場合には、その内容も正確に契約書に記載する必要があります。そのため、物品の売買契約をお考えの場合には、一度、当事務所の弁護士に相談して頂ければと思います。
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