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不動産賃貸借契約について

投稿日:
更新日:2023/12/21
不動産賃貸借契約について

1. 不動産賃貸借契約について

不動産賃貸借契約について

不動産賃貸借は、個人から企業まで、もっとも馴染みある取引の一つです。不動産賃貸借契約は、賃貸人が賃借人に対して、ある不動産を使用収益させ、賃借人が賃貸人にその対価を支払うことを内容とする契約です。

賃貸借契約は、一定期間、当事者間で契約関係が継続することが前提となります。そのため、当事者間で契約関係が継続することを前提に契約内容を考える必要があります。さらに、不動産賃貸借契約は、居住または事業目的であるかを問わず、容易に終了を認めてしまうことの不利益の大きさから、その終了には一定の制限が存在します。

加えて、不動産賃貸借については、民法に加えて、特別法である借地借家法の適用があるため、契約書を作成する上では、同法との関係も気を付けなければなりません。このような基本的な視点を踏まえて、一般的な不動産賃貸借契約は、以下のような構成になります。

2. 一般的な不動産賃貸借契約の構成

2-1. 前文

貸主、借主及び賃貸借となる不動産を規定します。

2-2. 賃貸借契約の概要

以下のような項目を規定します。

  • 賃貸借の対象となる不動産

    通常は、不動産登記に記載している事項を記載します。また、アパートなどの場合は、部屋番号等を記載するのも一般的です。

  • 賃料

    賃料の金額、支払時期や支払い方法も等も明示する必要があります。また、一定の事情の変化などを理由に賃料の増減を請求することができるといった内容も定めるのが一般的です。

  • 契約期間

    不動産賃貸借は、一定期間、不動産を賃借することを内容としていますので、その期間を明示する必要があります。また、契約期間についても民法及び借地借家法により制限が存在するため注意が必要です。さらに、借地借家法では、期間の定めがある場合及び契約更新についての規定が存在するため、その内容を契約書に正確に反映し、当事者間で認識のずれが生じないようにする必要があります。

2-3. 敷金に関する定め

敷金に関する定め

敷金は、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生じる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいいます。

敷金を支払う場合には、その金額も契約書に明示することが必要です。

2-4. 賃貸人の義務

2-4-1. 修繕義務

修繕義務

賃貸人は、目的物を賃借人に使用収益させる義務があるため、その使用収益に必要な修繕する義務があります。この修繕義務については、紛争の予防のためにお互いが負担する範囲を明確にすることが必要です。

なお、改正民法(2020年4月1日施行)では、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったのにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときや窮迫の事情があるときは、賃借人による修繕が認められることになりました。

2-4-2. 費用償還義務

賃借人が、必要費を負担した場合には、直ちに賃貸人に対してその費用を請求できます。また、有益費を支出した場合の償還についても、契約の終了時に賃借人は賃貸人に対して行うことができます。もし、賃貸人がこれらの費用負担を負わないとする場合にはその旨の規定も必要となります。

2-5. 賃借人の義務

2-5-1. 原状回復義務

原状回復義務

賃借人は、賃貸借契約が終了した場合、目的物を原状回復する義務を負います。

建物の賃借の場合の原状回復とは、賃借人の使用、居住により発生した建物の価値の減少のうち、賃借人の故意、過失などによる損耗、毀損を回復することをいいます。建物については、原状回復の費用負担についてのガイドライン(国土交通省住宅局「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改定版・平成23年8月))が参考になります。

また、経年変化あるいは通常の使用による損傷に関する原状回復については、原則は賃貸人が負担することになります。特約によって賃借人の負担とすることも可能であることから、その場合には特約を規定する必要があります。

2-6. その他の条項

2-6-1. 使用目的

居住用のアパートであれば「居住」、飲食店であれば「飲食店経営」といった記載をすることになります。そして、この使用目的に反した場合には、賃貸借契約を解除される可能性があります。

2-6-2. 禁止事項

賃貸借契約では、通常、賃借人について契約期間中に禁止される事項が定められるのが一般的です。そして、この禁止事項に違反した場合には、契約を解除されることになるため、禁止される行為については具体的かつ明確に記載する必要があります。

2-6-3. 解約

期間の定めのある賃貸借契約については、原則として、賃貸人及び賃借人のいずれも契約の途中解約は認められません。そのため、賃貸借契約に期間の定めがあり、途中解約を認める場合には、途中解約に関する条項を契約書に記載する必要があります。

しかし、途中解約については、借地借家法による制限があり、その規定が無効とされる可能性があるため注意が必要です。

2-6-4. 解除

賃貸借契約については、判例による制限により、契約違反が存在するとしても直ちに解除できるわけではありません。具体的には、契約違反により賃貸人と賃借人との間の信頼関係が著しく破壊されたといえる事情が必要となります。

3. まとめ

賃貸借契約は、民法だけでなく借地借家法の適用を受けるため、これらの法律との関係に気をつけながら契約書を作成する必要があります。また、一定の形式が求められる賃貸借契約も存在します。

そのため、契約書を作成する際には、是非豊富な経験を有する当事務所にご相談ください。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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