企業法務コラム
金銭消費貸借契約について
更新日:2023/12/21
1. 金銭消費貸借契約について
金銭消費貸借契約は、金銭の貸し借りに関する契約であり、会社間取引だけでなく、個人間においても日常的に取り交わされる契約です。
しばしば「借用書をとっているので貸金を回収してほしい」等のご相談をいただきますが、いざ借用書を拝見すると、借用書として有効でなかったり、重要な要素が抜けていたりするケースが散見されます。
そこで、以下では金銭消費貸借契約書について解説します。
2. 一般的な金銭消費貸借契約の構成
2-1. 金銭を貸し付けたことを示す条項
「AはBに対し、本日、金●●万円を貸し付け、Bはこれを受領した」との内容の条項が必要となります。
金銭消費貸借契約は要物契約といって、金銭の交付によって契約が有効に成立するのが原則です。従って、貸主が金銭を「貸し付け」、借主がこれを「受領した」との規定を設けることになります。
なお、民法の改正により、前述の要物契約性が緩和されており、書面で契約を取り交わす場合には、その場で現実に金銭を交付しなくとも、将来的に金銭を引き渡すことを内容とする契約も有効に成立することが明文化されました。
2-2. 返済期限、返済方法を定める条項
貸主が貸し付けた金員を借主がいつ返済するのか、すなわち返済期限を定める条項が必要となります。
返済期限を定めることにより、借主が返還義務を負うものであることがより明らかになるとともに、返済期限を徒過した場合には、返済期限の翌日が遅延損害金の発生する起算日ともなりますので、非常に重要な規定となります。
また、返済方法を定める規定が必要です。例えば、銀行送金によって行うのか、あるいは、借主が貸主のもとに持参して支払うのかといった問題です。この点について、何ら定めをしなかった場合には、民法の規定に従い、借主が貸主の現住所に持参する方法により支払うこととなります。
なお、返済方法を銀行送金にする場合には、振込手数料を貸主・借主いずれの負担にするのかを明示することが無用のトラブル防止の上で重要です。通常は借主の負担とするとの約定をおきます。
2-3. 利息・遅延損害金を定める条項
利息制限法に触れない範囲で、当事者間で任意に利率を設定することができます。特に定めがない場合には法定利率(年5分または年6分)に従うこととなります。このことは遅延損害金にも同様にあてはまります。
2-4. 期限の利益が喪失する旨の条項
返済期限が定められている場合、その期限までは借主はその返済が猶予されることとなります。このように返済を猶予されることによって得られる借主の利益のことを「期限の利益」といいます。
裏を返せば、返済期限を定めた場合、返済期限が到来するまでの間は、貸主は直ちに貸金を返済するよう求めることができません。そこで用いられるのが期限の利益を喪失させる旨の条項です。例えば、「借主が返済を一度でも怠った場合には期限の利益を喪失し、貸主は一括して残金を請求できる」といった条項です。
弁護士等の専門家によるチェックを経ていない借用書において最もよく見られる失敗例の1つが、この期限の利益喪失条項を欠いているというものです。
期限の利益喪失条項が欠けていると、返済期限が既に到来している貸金部分しか、即時の返還を求めることができません。しかしながら、貸金の返済の場合、ひとたびその返済が滞りはじめると期限が未到来についての返済も含め、期限内に返済されるのか疑義が生じるのが通常です。
そのため、貸主としては、期限の利益を喪失させる条項をきちんと定め、一定の遅滞が発生した場合には直ちに全額請求できるような契約内容にしておくことが、一回的に回収を図ることを可能にするためにも重要です。
2-5. 担保を設定する
金銭消費貸借契約における貸金が高額に及ぶ場合には、より実効的な回収を可能にするため、借主に対し、担保の提供を求めることも考えられます。担保には大きく分けて人的担保と物的担保とがあります。
2-5-1. 人的担保
連帯保証人が典型例です。簡単に言えば、連帯保証人とは、主債務者(借主)と同種の債務を負う保証人のことをいいます。借主よりも資力のある者が連帯保証人となればより実効的といえます。
連帯保証人を担保とする場合には、必ず連帯保証人から直接、署名捺印をもらうことが重要です。
2-5-2. 物的担保
抵当権が典型例です。抵当権は不動産の価値に着目して、これを担保にするのが代表的なもので、金融機関からの借入や企業間での取引において頻繁に用いられるものです。
しかしながら、貸金の額が非常に多い場合には、たとえ個人間でなされる日常の金銭消費貸借契約であっても抵当権を設定することは人的担保以上に実効性があるといえます。
なお、抵当権に代表される物的担保は、必ずしも借主本人が所有する財産に限らず、第三者の財産を目的とすることも可能です。もっとも、その場合には、当然のことながら、当該第三者との間で抵当権設定契約を締結する必要があります。
3. 最後に
金銭消費貸借契約は、日常的に用いられ、馴染みのある契約類型ではありますが、金銭の貸し借りによるトラブルが非常に多いのもまた現状です。安易に口頭で金銭を貸し付けるのではなく、しっかりとした契約書を取り交わすことが肝要です。また、貸付額が大きくなればなるほど、根深いトラブルにも発展します。
金銭の貸し借りを事前にされる場合には、会社間、個人間を問わず、当事務所までご相談ください。
監修者
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