企業法務コラム
36協定違反の罰則等
更新日:2024/10/15
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、三六協定についてです。
今回は「三六協定」について学んでいきます。まず、三六協定という言葉を聞いたことがあるのですが具体的にどのようなものか教えてください。
はい、三六協定とは、簡単に言うと、法定労働時間を超えて労働時間を延長したり、休日に労働させることができるようにするために必要な労使間の決まり事のようなものです。
法定労働時間を超えて労働時間を延長したり、休日に労働させるというのは、要するに「残業」ということですか。
そうですね。要するに、1日8時間、1週40時間を超えて就業させるためには三六協定を用意する必要があるという事です。ちなみに、三六協定は、使用者と事業場の労働者の過半数を組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で締結しなければなりません。
三六協定は社内で締結手続きが完結するという事ですか。
いいえ、それだけではなく、労働基準監督署へ届け出ることまで必要になります。また、三六協定には有効期限が設定されていることが多く、更新手続きも忘れないように注意しなければなりません。三六協定に自動更新の規定を設けている場合も、更新することについて労使いずれの側からも異議が出なかった事実を証明する書面を届け出なければなりません。
三六協定は思っていたよりも手続きが大変そうですね。でも、三六協定を締結して、労働基準監督署に届け出さえすれば、何時間でも残業してもらうことができるのですよね。
決してそんなことはありませんよ。確かに、昔は、三六協定の内容が過度な長時間労働を前提とする内容だったとしても効力自体は有効と解されていました。しかしながら、2018年6月に成立した働き方改革関連法によって長時間労働の是正のための労基法改正が行われ、「時間外労働の罰則付上限」が導入されました。この上限規制は、大企業については2019年4月1日から、中小企業についても2020年4月1日から施工されています。
罰則が用意されていたのですね。どれだけ長時間労働になっても、いざとなったら残業代を支払えば済むものと思っていました。罰則を受けずに済むように三六協定を整備するにはどのような点に注意したら良いですか。
三六協定で時間外労働時間を設定する際には主に以下の3つのポイントに注意しましょう。
①「限度時間」:1カ月につき45時間、1年につき360時間
②「特別協定」:1カ月100時間未満(6カ月以内)、1年720時間を超えない範囲
③「実労働時間の定め」:直前の1、2、3、4または5カ月の時間外労働および休日労働の合計を1カ月平均で80時間とすること
①限度時間は、時間外労働の原則的な基準となります。予想外の業務量の大幅な増加等に伴って臨時的に限度時間を超える時間外労働の必要性がある場合には、②特別協定によって、時間外労働時間を拡張することができます。ただし、特別協定によって拡張できる範囲も無制限ではなく、1月の時間外労働時間が45時間を超えて良いのは6カ月以内に限定されますし、また、③複数月の平均が常に80時間以内に収まるようにしなければなりません。
また、①限度時間、②特別協定の定めは、三六協定の要件となっており、これらの上限に違反する三六協定は無効となってしまい、その場合、法外残業をさせると罰則規定の適用を受けることとなってしまいます。
とても複雑で頭が混乱します。簡単に言ってしまえば、ルールをきちんと理解した上で三六協定を作成しないと意味がないということですね。ただ、医師やトラックドライバーなどはどうしても労働時間が長くなりがちだと思うのですが、同様に上限規制が課されるのでしょうか。
実は、建設業、自動車運転業、医師などの一部の業種は、2024年まで残業時間の上限規制の適用が猶予されていました。これらの業種はどうしても長時間労働を避けられない面があるため、業種ごとに特別な定めが用意されることとなっています。
ただでさえ複雑なのに業種ごとの区別まであるなんて、専門家に相談しないとミスが起こりそうで怖いですね。その外にも、注意すべき点があれば教えてください。
三六協定を定めたからと言って当然に残業を命令できるわけではなく、労働協約や就業規則で残業命令を発する根拠を定めておかなければ従業員に残業義務は発生しませんので注意が必要です。
また、労働時間の管理を誤ると、後々、残業規制の上限規制に違反していることが発覚して、罰則が適用されてしまう可能性もありますので、長時間労働が恒常的に発生している職場では、正確に労働時間を管理する方法についても検討する必要があります。
三六協定の内容や時間外労働時間の上限規制など注意すべき点がたくさんあるということが分かりました。今日もありがとうございました。
監修者
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