企業法務コラム
新型コロナウイルスと労務問題
更新日:2021/09/22
新型コロナウイルスは、変種株などの影響もあり、ワクチン接種が進んでいる現時点においても、感染者が多く発生している状況です。
そして、新型コロナウイルスによって、これまでは問題となっていなかった労務問題も新たに発生するようになっています。そこで、本コラムではその一つの例を取り扱いたいと思います。
新型コロナウイルスの影響により在宅勤務がこれまでより増えてきています。もっとも、従業員が一方的に在宅勤務とすることはできるのでしょうか。通勤においては、不特定多数の人がいる場所を通ることが不可避な場面もあり、特に、ラッシュの時間帯では人混みに紛れて出社しなければならないこともあるため、出勤中に新型コロナウイルスに感染することも否定できません。そこで、従業員の意思のみで、新型コロナウイルス感染のおそれを理由に、出勤を拒否し、在宅勤務をすることができるのでしょうか。
結論としては、できないと考えられます。そもそも、どこで勤務をしてもらうかを決定できるのは、基本的には会社であり、従業員ではありません。そのため、出勤するようにという会社の命令に応じない場合は、業務命令違反ということになります。
なお、例えば、従業員が出勤中に新型コロナウイルスに感染した場合、会社は責任を取れるのかと反論してくることも予想されます。しかし、従業員は労働提供義務があり、会社の指示する業務を指定した場所で行わなければなりません。そのため、通勤中に仮に感染した場合(これを立証できるのかも疑問ですが)であっても、会社が直ちに責任を負うとはいえないと考えます。
もちろん、会社として、業務の実態に応じて、従業員の以上のような懸念に対応していくことに検討の余地はあるかと思います。
他にも新型コロナウイルスを理由にこれまで考えてもみなかった話を従業員から受けることがあるかと思います。その際は、ぜひ弊所にご相談いただければと思います。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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