企業法務コラム
残業代の未払いはどのようなリスクがあるのか?
更新日:2024/09/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、残業代の未払いのリスクについてです。
残業代はどのような場合に発生するのでしょうか。
一言で「残業代」といっても、2つの意味が考えられます。1つは就業規則に定められている所定労働時間を超えた場合の賃金の意味で使われ、もう1つは法定労働時間を超えた場合の賃金を指します。労働法上は後者の意味で「時間外労働」という言葉が用いられています。
法定労働時間を超えて労働させることはそもそもできるのでしょうか。
労使間において時間外労働に関する協定(これを「36(サブロク)協定」といいます。)が締結され、これが労働基準監督署に届け出られていれば、法定労働時間を超えて労働させることも可能です。
法定労働時間を超えた場合にはどのような賃金が発生するのでしょうか。
労働基準法37条に規定されています。すなわち、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金」を支払わなければなりません。
この割増賃金を支払わなかった場合のリスクには何があるのでしょうか。
まず、割増賃金にも遅延損害金が発生します。次に、付加金の支払いがあります。
付加金とは何でしょうか。
労働基準法114条に規定があります。使用者が払わなければならない割増賃金の未払い分だけでなく、これと同額の支払いを裁判所が命じるものです。未払いの割増賃金が多額であればあるほど、付加金のリスクも大きくなります。
他に考えられるリスクはありますか。
割増賃金の未払いの場合には、罰則規定も存在します。具体的には、「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」を受ける可能性があります(労働基準法119条1号)。
割増賃金の未払いに対する制裁はかなり厳しそうですね。割増賃金を支払わなくていい労働者も存在すると聞いたことがありますが、そのような例外もあるのですか。
例えば管理監督者が挙げられます。管理監督者は労働時間の規制が適用されないためです。管理監督者とは、事業主に代わって労務管理を行う地位にあり、労働者の労働時間を決定し、労働時間に従った労働者の作業を監督する者をいいます。つまり、管理監督者は非常にごく限られた労働者に限られます。裁判等では、監理監督者であるから時間外手当の支給を要しないと主張する使用者と、その支払いを求める労働者との間の争いが先鋭化することもあります。
時間外手当が発生する否かで随分と使用者の支払義務の大きさが変わってきそうですね。
そのとおりだね。しかも、過去に遡って請求できるとなると、相当な金額に膨れ上がること事例もしばしばあるからね。
過去に遡るというのは、どれくらい遡るのですか。
過去3年間に遡ります。
残業代の未払いによることで使用者に課される制裁はどれも重そうですね。労働時間の把握が重要なことがよく分かりました。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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