企業法務コラム
雇用契約書・労働条件通知書
更新日:2024/07/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、雇用契約書・労働条件通知書についてです。
そもそも、会社が従業員を雇うときには、雇用契約書を作成する必要があるのでしょうか。最初の出勤日と月給を口頭で伝えていれば、支障はないようにも思うのですが……。
結論からいうと、従業員を雇用するときには、法律で決められている事項を記載した書面を従業員に渡す必要があります。これは、法律で決まっているルールです。
雇用契約書ではなく、労働条件通知書という書面を会社から渡されることもあると思うのですが、それでもよいのですか。
労働条件通知書でも問題はありません。重要なのは、雇用契約書・労働条件通知書のいずれであっても、法律で決められている事項が記載されているかどうかです。
よく見かけるのは、雇用契約書ではなく労働条件通知書の方ですが、理由があるのでしょうか。
明確な理由はないのですが、労働条件通知書の雛形は、厚生労働省がウェブサイトで公開しているので、それをそのまま使用している会社が多いということだと思います。 この雛形を使用すれば、記載事項が漏れるということは基本的にはないです。
会社としては、どちらを使うほうが良いのでしょうか。
どちらでもよいと思います。ただし、どちらを使うとしても、注意する必要がある点があります。まず、よく見かける例ではありますが、入社時にだけ書面を渡していて、その後の給与体系の変更に即して変更していない例です。
昇進すると、基本給が変わったり、新しく手当がもらえることもありますね。
そうです。例えば、多くの会社は1年に1回の頻度で昇給等があると思いますが、それによる変更を反映する必要があります。ただし、実際には、多くの会社がこれに対応できていないのが実情です。もう1つは、就業規則との関係です。
就業規則との関係というと、どういうことでしょうか。
これもよくあるケースなのですが、例えば、就業規則の中に給与に関する項目がありますね。多くの会社では、給与規程・賃金規程という別の規程に切り出しています。 規程で記載されている給与・手当の内容と、雇用契約書・労働条件通知書で記載されている内容がずれていることがよくあるのです。
なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
理由はいろいろとあるのですが、規程の内容が古いままで実態に即していないということがあります。また、先ほど申しましたように、雇用契約書・労働条件通知書が入社時から全く更新されていないということもあります。
ずれがあると、どのような困ったことになるのでしょうか。
この点は、両方の優先関係を理解する必要があります。イメージをつかむために簡単に言いますと、雇用契約の内容と就業規則の内容が相違する場合には、従業員に有利な方が採用されるというルールがあります。例えば、給与・手当・退職金について、雇用契約書の方が就業規則よりも従業員に有利になっているとします。そうすると、雇用契約書の方が優先されてしまうのです。これは、雇用契約書の内容が何らかの理由で間違っていたとしても同じです。会社が「雇用契約書の記載が間違っていました」という言い訳を後からすることはできません。ですから、雇用契約書・労働条件通知書は、定期的にチェックする必要があるのです。
就業規則の方が常に優先するわけではないのですね。
そうです。そのような誤解をしている会社も多いと思いますので、注意しなければならないところです。
確かにそうですね。
それ以外で言うと、服務規律の内容として、就業規則に記載するような内容を改めて雇用契約書にも記載することで、従業員にあらかじめ注意喚起を促す効果がありますね。
また、秘密保持・競業禁止が重要になる業種では、在職中はもとより、退職後のことも想定して、入社時に明確化しておくほうが望ましいです。
このような事項は、労働条件通知書でも特記事項に記載することはできますが、雇用契約書のほうが作成しやすいかもしれません。
雇用契約書・労働条件通知書のどちらを使うかが重要なのではなく、より重要なポイントがあることがよく分りました。何となく作成していることが多いと思いますが、気を付けないといけませんね。
監修者
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