企業法務コラム
弁護士が解説 派遣法違反と罰則について
更新日:2023/12/21
派遣労働者とは、派遣元会社との雇用関係のもと、派遣先会社から指揮命令を受け、派遣先会社のために労働に従事する労働者のことをいいます。実際に働く場所は派遣先会社ですが、賃金を支払うのは派遣元会社です。このように雇用関係と指揮命令関係が一致しないという点に派遣労働者の特色があります。
派遣労働者は70年代後半から急速に増えたと言われています。派遣労働者は正社員に比して待遇面で劣後することが多く、キャリアアップも実現できないといった状態が横行していました。そこで、1986年に派遣労働者の保護を目的として「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」いわゆる「派遣法」が制定されました。
派遣法は制定から数度の改正を経て、派遣労働者の保護を大幅に強化してきました。名称も「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」と派遣労働者の保護をうたうものに変更されています。派遣労働者保護が強化された結果、制定された罰則の中には懲役刑等の刑事処分も含まれておりますの。派遣法の知識に乏しかったために派遣法に違反してしまったといった場合、取返しのつかない事態になるおそれもあります。以下では、代表的な派遣法違反事例にについて解説いたします。
1. 二重派遣
二重派遣とは、派遣先企業が更に別の会社に派遣労働者を派遣することをいいます。二重派遣は、派遣先企業が中間業者として機能することで派遣労働者の賃金が不当に引き下げられ、派遣労働者の待遇を悪化させるおそれが高いため、職業派遣法44条で禁止されています。当該法律に違反すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金刑が科せられます。また、派遣先企業が更に派遣を行うことで利益もあげていた場合、労基法6条が規制する「中間搾取の排除」に該当するため、労基法違反にもなり、1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金刑が科せられます。
二重派遣で処罰対象となるのは、まず派遣先企業です。また、派遣先企業から更に派遣を受けた企業も処罰の対象となります。なお、派遣元企業は処罰の対象外です。派遣元企業は通常の労働者派遣を行っているに過ぎないからです。
2. 偽装請負
自社は派遣事業を営んでいないので派遣法違反にはならない。そのように考えるのは早計です。
派遣先企業が派遣労働者を業務委託契約している企業で働かせること自体は違法ではありませんが、指揮命令を発注企業が行っているとすると、偽装請負として二重派遣に該当してしまいます。偽装請負は、派遣先企業が別会社に派遣労働者を出向させる場合にも問題となり得ます。ここでも指揮命令を出向先企業が行っている場合は二重派遣となってしまいます。
このように形式的には二重派遣に該当していなくても、実質的に二重派遣に該当するとして処分がされた事例は珍しくありません。安易に派遣法に違反とならないと考えるのではなく、派遣法に違反しているかもしれないと謙抑的に考えることが重要です。
派遣法違反は、刑事処分・行政処分が科せられるおそれがあるだけでなく、企業の信用が失墜して社会的評価の低下を招きかねない重大な事由です。専門家である弁護士に相談し、自社の事業が派遣法違反に該当しないか検証することを強くお勧めいたします。
監修者
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