企業法務コラム
従業員に関する差押通知が会社に届いたら?
更新日:2021/11/25
定期的に頂くご相談の1つに「従業員が債務者になっている差押通知が会社に届いたがどう対応すべきか」というものがあります。
通常、会社が各従業員の抱える債務の状況を把握しているということはありません。しかしながら、従業員の中には借入金の返済を滞らせていた場合等に金融機関や消費者金融等からの督促を無視して、裁判所から判決や支払督促を受けている方がいらっしゃる場合があります。その場合、金融機関等は取得した判決や払督促をもとに、その従業員が会社に対して有している給料債権を差し押さえることがあります。
給料債権が差し押さえられる場合、裁判所は債務者のみならずその債務者に給料を支払っている会社(この会社の立場のことを「第三債務者」といいます。)に対しても、差押通知を送ります。従業員に関する差押通知が会社に対しても届くのは、会社が第三債務者とされているためです。
第三債務者は本来であれば給料を従業員に支払いますが、差押通知が届いた瞬間に差押えの効力が生じ、以後、第三債務者は従業員に対し、手取りとして支給すべき給料の4分の1に相当する額は支給することなく、差押債権者に対して交付しなければなりません。「差押え」とは処分を禁止する効力、すなわち、給与として支給することが禁止される効力をもつためです。
第三債務者は、直ちに差押債権者に対して債務を負担するものではございませんが、差押えの効力に反し、万一、従業員に対して満額の給料を支給していたとしても、そのことを理由に差押債権者からの支払請求を拒絶することができず、本来支給すべきであった分につき改めて差押債権者に支払わなければなりません。もし、第三債務者がこの支払いを怠ると、差押債権者は、今度は第三債務者を相手取って「取立訴訟」を提起することが可能になってしまいます。
このように、従業員が給料債権を差し押さえられると、第三債務者たる会社にとっては非常に煩雑な手続きを強いられることになります。もし、皆様が第三債務者として差押通知を受領した場合には、遠慮なく弊所までお問い合わせください。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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