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企業法務コラム

残業代はどこまで遡って支払う必要があるのか

投稿日:
更新日:2024/09/30

東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。

今回のテーマは、残業代はどこまで遡って支払う必要があるのかについてです。

相談者
相談者

そもそも、残業代には時効というものがあるのでしょうか。例えば、10年前の残業代でも、支払いを求められると応じなければならないのでしょうか。

播磨先生
弁護士

時効はあります。そのため、10年前の残業代は時効にかかりますので、支払をする必要はありません。

相談者
相談者

残業代の時効は何年でしょうか。

播磨先生
弁護士

数年前に法律の改正がありましたが、現在は3年です。

相談者
相談者

そうすると、残業代を請求された場合に支払いに応じなければならないのは、最大で過去3年分という理解でよいでしょうか。

播磨先生
弁護士

その通りです。

相談者
相談者

残業代の支払が過去に遡って発生するのは、どのような場面でしょうか。

播磨先生
弁護士

この点は、未払残業代というキーワードでよく出てくるものです。このリスクが顕在化する要因は、主に、①労働基準監督署からの調査、②従業員からの請求の2つがあります。

相談者
相談者

未払残業代を請求されると、どのような点が問題になるのでしょうか。

播磨先生
弁護士

論点はいろいろとありますが、共通するのは、「実際の残業時間を厳格に検証する」という点です。資料の改ざん等は、絶対に行ってはいけません。

相談者
相談者

残業代の対象になるのは、就業時間後に残って勤務している場合だけでしょうか。例えば、終業時刻が17時の会社で、18時まで働くと、1時間の残業になるということは理解できます。

播磨先生
弁護士

それ以外にもありますね。早出の出勤であっても、業務の準備等を行っていることが恒常化しているようなケースであれば、残業時間にカウントされます。そのほかに注意する必要があるのが、休憩時間です。多くの会社では、12時から13時の1時間と定められているケースが多いと思います。休憩時間が取得できていないのであれば、その時間も労働時間にカウントされますので、残業代の対象になってしまいます。

相談者
相談者

そうすると、範囲が思っているよりも広くなりますね。

播磨先生
弁護士

その通りです。

相談者
相談者

ところで、残業代を請求された場合には、会社はどのように過去の記録を検証すればよいのでしょうか。

播磨先生
弁護士

この点はいくつかのパターンがありますので、分けて説明しますね。まず、従業員の自己申告(いわゆる「日報」制)を採用している会社です。日報の典型的なものは、従業員が出勤時間と退勤時間を自分で記載していくものですね。イメージとしては、日報の内容がそのまま残業時間として認定されるわけではありません。裁判所も労働基準監督署も、「実態」を重視して残業時間を判定するためです。往々にして、日報では残業時間が過少に記載される傾向がありますので、日報の有効性は割り引いて評価されると考えてください。

相談者
相談者

日報が一律にダメということでしょうか。

播磨先生
弁護士

そういうことではありません。日報も残業時間の管理の根拠にはなります。ただ、残念ながら、日報は実態よりも残業時間が少なく記録される傾向があるため、会社として日報に記載している残業時間が実態に合っているかを平素から検証することが求められるわけです。現実としては、全く検証をしていない会社が多いように思います。

相談者
相談者

タイムカード等で管理している会社はどうでしょうか。

播磨先生
弁護士

イメージで言いますと、タイムカード等の方法で労働時間管理を行っている会社のケースでは、基本的には、タイムカード等で集計された時間がそのまま残業時間として認定されることになります。但し、タイムカードといっても様々です。昔は、従業員がタイムカードの用紙を機械に入れて打刻するものしかありませんでしたが、今は様々なものがあり、会社のパソコンにログイン・ログアウトした時間等を自動的に集計できるシステムやアプリもありますね。

相談者
相談者

ありがとうございます。機械的な記録と言っても、伝統的な打刻方式は、手書き日報よりは信用性があるでしょうけれども、会社が帰りの打刻時間を実際よりも早くするように指示している場合には、手書き日報と同じ問題が起きますね。

播磨先生
弁護士

その通りです。このようなことがあるため、残業代を請求されると、色々な点が問題になります。残業代の時効は、将来的に長くなることはあっても、短くなることはないでしょう。現在の3年の時効になる前は2年の時効でしたから、残業代のインパクトは1.5倍になったことになります。請求されてから対応するということでは遅いですから、平素からの管理が大切です。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
連絡先
[代表電話] 03-6432-9783
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WEBサイト
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