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企業法務コラム

法人・会社の清算手続と再建手続について弁護士が解説します

投稿日:
更新日:2022/08/10

法人・会社が債務超過に陥った場合にその会社・法人の事業を継続させる方針なのか、事業とともに法人を清算させる方針なのかによって、その手続きは全く異にします。

財務状況次第では、事業譲渡やM&A、民事再生手続によって事業を活かすことが考えられますし、債務超過が顕著な場合や今後の事業継続の見通しが立たない場合には、破産手続を主とした手続きを検討することになります。本コラムでは再建をめざす法的手続である民事再生手続と、清算をめざす破産手続について、それぞれのメリット・デメリットについて概観します。

一言で倒産といった場合でも、正確には再建をめざす倒産手続と清算をめざす倒産手続があります。前者の代表例が民事再生手続であり、後者の代表例が破産手続です。

民事再生手続は「事業」の再生をめざす手続であり、必ずしも法人そのものを存続させることを目的とはしません。もちろん、法人そのものの存続を図るスキームを立てることはできますが、事業をいかに再生させるかに主眼が置かれた手続きです。

そのため、民事再生手続は事業を継続しながら行うことが前提となる手続であり、同手続を申請した債務者(法人・会社)にイニシアティブが維持された手続です。

それでは、「債務者にイニシアティブが維持された手続」とは具体的にはどのようなことかを説明します。最も大きな点は、会社・法人が抱えている在庫、従業員の雇用、各種契約関係、各種財産の管理処分権はいずれも債務者に残されるという点にあります。

清算をめざす破産手続においては、これらの管理処分権は全て裁判所が選任する破産管財人に移りますが、民事再生手続では債務者が継続して管理処分権を有します。そのため、例えば従業員の雇用は守られますし、在庫の処分等も手続の中で行うことができます。

また、会社・法人が既に負担する債務のうち、どの程度の免除を受け、免除後の残債務をどのように弁済していくかの計画も、会社・法人が主体となって策定することができます。この計画のことを「再生計画案」といい。一定数の債権者の同意を得て上で、裁判所の認可決定を得ることができれば、再生計画案に従った権利の変更(債務者が負担している債務の内容の変更)が実現できます。

他方、破産手続は民事再生手続と対照的な手続です。事業のみならず会社・法人を清算する手続ですので、会社財産や従業員の雇用等も全て維持することは想定されていません。そのため、民事再生手続で債務者に認められる財産管理処分権は全て破産管財人に移転します。

破産手続は会社財産を全て換価(現金化)し、破産財団を形成したうえで、破産財団から債権者への配当を行い、手続が終結いたします。民事再生手続のように、将来にわたる弁済計画を立てることもなく、配当が終了すれば手続も終結するため、手続に対して債権者の同意が要求されることもありません。

その意味で、ひとたび債務者が破産手続を申し立てれば、以後は裁判所及び破産管財人が主導となって進められる手続きといえます。「債務者のイニシアティブ」というものは、破産手続の申立てをするか否かという局面においてのみ認められる手続です。

このように、破産手続と民事再生手続は、いずれも「倒産手続」とされるものの、その内実は事業の継続か清算か、債務者がイニシアティブを有するか否かという点で全く異にする手続きです。事業を継続させるか否かという極めて重要な判断を迫られるのみならず、技術的専門的な手続となりますので、弁護士への相談が必須といえるでしょう。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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