企業法務コラム
残業代の未払いにおける注意点・罰則
更新日:2024/09/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、残業代の未払いにおける注意点・罰則についてです。
はい、今回は残業代の未払いにおける注意点・罰則について学んでいきます。まず、残業代というと、割増賃金を支払わなければならないというイメージがあるのですが、すべてのケースで割増賃金の支払いが必要になるのですか。
実は、全ての残業について割増賃金の支払いを義務付けられるわけではありません。労働時間が、1日8時間、週40時間を超えた場合に、2割5分の割増賃金の支払義務が法的に課されることとなります。
そうなのですね。もう少し具体的に教えてください。
例えば、あなたの職場で、就業規則上、9時から17時までが所定労働時間(休憩が1時間)と定められているとしましょう。1日の所定労働時間は、(休憩を除くと)7時間になりますので、17時から18時まで1時間残業しただけでは、まだ1日8時間を超えませんので割増賃金を支払う必要はないこととなります。
なるほどですね。他にも、1日の労働時間が7時間であったとしても、週に6日働くと、合計で週42時間の労働となります。その場合、毎日1日8時間以内の労働に収まっているものの、週40時間を超えてしまうので、超過分の2時間分の割増賃金を支払わなければならなくなるのですね。
そのとおりです。なので、使用者は残業代の算定の際には、1日当たりの労働時間と1週当たりの労働時間の両方に注意しながら、適宜割増賃金を支払うようにしなければならないということになります。なお、大前提として、時間外労働は原則、違法となっていますので、必ず36協定などの法律上の手続きを忘れないようにしてください。
ほかにも、割増賃金を支払わなければならないケースがあると聞いたことがあります。
はい、他には、22時から翌5時までの間は2割5分の割増賃金の支払義務が課されます。また、休日労働の場合は3割5分の割増賃金の支払義務が課されます。仮に、休日の22時から翌5時までに労働した場合は、計6割(=2割5分+3割5分)の割増賃金の支払義務が課されることとなります。
わかりました。ただ、そうなると残業代の計算って複雑で面倒ですね。何か良い方法はないですか。
はい、最近は、残業代の計算の手間を省くために固定残業代を導入する企業も増えています。この制度は、予め45時間以内で月の残業時間を固定し、その固定分の残業代を機械的に支払うというものです。例えば、月の残業時間を20時間と設定した場合、実際には10時間しか残業が発生していなかったとしても、20時間分の残業代を支払うというものです。
確かに、その方法だと使用者にとっては計算の手間が省けますし、労働者にとっても実際の労働時間よりも多めに給与をもらえるかもしれないのでwinwinの制度ですね。
ただし、固定残業代を導入したとしても、労働時間の管理が一切不要になるわけではありません。万一、固定残業時間を超過する残業が発生した場合には、その超過分の残業代も別途支払う義務が生じますので、注意が必要です。先ほどの、月20時間の固定残業を導入している企業で、月23時間の残業が生じた場合は、超過した3時間分については別途残業代の支給が必要になります。
これまでの説明で、残業代の支払いの注意点として、労働時間を正確に把握して、なお且つ、割増率の適用を誤らないようにしなければならないということがよく分かりました。他にも、残業代の支払いに関して注意すべきことはありますか。
はい、残業代を適切に支払わなかった場合のリスクとして、まずは労基署が介入してくるということが想定されます。労基署の監督官は強力な調査権限を有していますので、その対応だけで非常に労力が割かれてしまいます。また、訴訟等に発展した際に裁判所が残業代の未払いの経緯が悪質であると判断した場合には、「付加金」といって、本来支払うべき残業代の倍の金額の支払義務を課されてしまう可能性もあります。さらに、最悪の場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑すら課されてしまいます。
残業代時間の管理は使用者にとっては非常に重要な問題であるということが分かりました。今日もありがとうございました。
監修者
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