企業法務コラム
労働時間とは?
更新日:2024/07/30
東京・神戸・福岡・熊本・長崎・鹿児島に拠点がある弁護士法人グレイスの労働法コラムです。
今回のテーマは、労働時間についてです。
労働時間について、例えば、待たされている時間だったり、曖昧な時間があったりすると思うのですが、どのように判断するのですか。
そうですね。曖昧な時間もあると思いますが、判断基準としては「使用者の作業上の指揮監督下にある時間または使用者の明示ないし黙示の指示によりその業務に従事する時間」に該当するかによって判断されます。
何だか長くて難しそうですね。先程、例に挙げていた待ち時間や、休憩等の時間はどうなるのですか。
労働時間に該当しないケースもあります。もっとも、一時休息、仮眠、待機時間等であったとしても、いつでも使用者が指揮命令できる状況にあり、指揮命令があれば即座に対応しなければならない状況下に労働者が置かれている場合には、それらの時間は労働時間と判断されます。例えば、トラック運転手が貨物の積み込みを待っている時間などが問題となります。
なるほど。そうだとすれば、通勤や出張等の移動時間は指揮命令されていなそうなので、労働時間にはならないという理解で良いでしょうか。
そうですね。通勤や出張等の移動時間は原則として労働時間に該当しないと考えて良いでしょう。もっとも、例えば携帯電話を持たされており、電話を通じていつでも指揮命令に応えなければならないことが義務付けられていたり、通勤・出張といった移動時間において移動とは別の業務にあたることが予定されているような場合には、これらの時間も労働時間にあたる可能性があります。
なるほど。そうだとすれば、上司が具体的に業務指示をしていない場合は労働時間に該当しないと考えて良さそうですね。
使用者が具体的に業務指示をしていない場合であっても、労働時間にあたる場合があります。例えば、本来の業務に付随する業務を行う必要があるため早出や就業時間後に残業を行うケースが考えられます。これらのケースで多いのは、使用者側が早出や就業時間後の残業を行っている事実を知っており、あるいは知り得る状態にあるのに、それを黙認しているようなケースです。このような事情がある場合には、たとえ使用者側が明示的に早出や残業をするよう指示を出していなかったとしても、労働時間にあたります。
なるほど。なかなか判断が難しそうですね。企業としては、労働時間についてどのように把握すべきなのですか。
労働時間の把握については、厚生労働省労働局長が「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平29・1・20基発0120第3)を策定しており、参考となります。同ガイドラインでは、①使用者が、自ら現認することにより確認すること、②タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認すること」を原則的な方法として挙げています。もちろん、他の方法で適切に労働時間を把握する方法であれば差し支えありません。
なるほど。でも、タイムカード等で管理していても、その前後に労働時間が発生したりする可能性はあるのですよね。
そうですね。その可能性はありますよね。使用者としては、始業時刻、終業時刻、休憩時間及び実労働をしていないと思われる時間を把握し、その上で、労働時間とすべきか休憩時間とすべきか判断に迷う時間について洗い出しを行うことも重要です。その上で、同時間について、労働時間として扱うかを判断することになります。同判断に迷う場合には、弁護士に相談することも検討していただければと思います。
そうなのですね。ありがとうございました。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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