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企業法務コラム

時間外労働の割増賃金率の変更等について

投稿日:
更新日:2023/03/20

法改正

弁護士:戸田晃輔

労働に関する法令の改正が続いています。本コラムでは、2023年4月1日に施行予定の労働基準法の改正等についてご紹介いたします。
労働に関する法令は改正の中でも影響が大きいと考えられるのは、時間外労働の割増賃金率の引上げです。月60時間を超える時間外労働の割増賃金率について、労働基準法では50%とする旨が定められており、既に大企業でこの規定が適用されています。他方、中小企業はその適用が猶予され、25%とされています。しかし、2023年4月1日から中小企業に対する適用の猶予がなくなり、大企業・中小企業を問わず、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が一律50%となります。そのため、中小企業においては、今年の4月1日以降、60時間以上の時間外労働に対する賃金の支払いが増加することとなります。
また、同じく労働基準法において、時間外労働の上限規制に関する改正も既に行われています。法改正前は、厚生労働大臣の告示で時間外労働の上限基準が定められていました。しかし、臨時的な特別の事情がある場合にはこの告示による上限基準を超えることができ、かつ、その上限を超えた場合の労働時間についての規制もありませんでした。2020年4月の法改正では、時間外労働の上限規制が法律で定められました。臨時的な特別の事情がある場合でも、この上限を超えることは許されません。なお、一部の業種では現在もこの規制の適用が猶予されていますが、現在適用の猶予を受けている業種においても、2024年にはこの上限規制の全部又は一部の適用が始まります。
その他にも、民法改正により、賃金債権に関する消滅時効期間が2年間から3年間になりました。これは、仮に残業代の未払いがある場合、労働者から遡って請求される未払残業代が法改正前に比べて多額になることを意味します。
このように、時間外労働を抑制する流れはさらに進み、それに加えて未払いが生じている場合のリスクも増加するなど、時間外労働対策が今後もより重要な経営課題となっていくと考えられます。時間外労働を前提とせざるを得ない事業を営んでいる企業様にとっては、賃金の支払いが増加することも予想されるため、その対策は必須といえるでしょう。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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