企業法務コラム
相続放棄
更新日:2023/05/22
最近、「相続放棄をしたい」というご相談が増えてきましたので、本稿では「相続放棄」について簡単にご説明いたします。
「相続放棄」とは、相続人が被相続人の死亡により当然に発生した包括承継の効果を、自己のために遡及的に消滅させる目的で行う意思表示です(民法938条)。要は、相続放棄は相続人に認められた選択権(民法915条)の一つであり、相続放棄をすることによって、相続開始の日(被相続人が死亡した日)にさかのぼって、その相続についてはじめから相続人にならなかったものとみなしてもらうことができます。そして、その結果、被相続人の遺産の全て(プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)の両方)を放棄することができる、というものです。
ここで、「相続放棄はいつでもできるものであり、相続放棄をするとの意思表示さえすればよい」と勘違いされている方がいらっしゃいますが、相続放棄をするためにはいくつかの要件があります。
具体的には、①(基本的に)自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、②(被相続人の最後の住所地の)家庭裁判所において必要な手続を行う必要があります。
この①「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、原則として、被相続人の死亡の事実を知り、かつ、これにより自己が法律上相続人となった事実を知った時を言います。そのため、例えば被相続人が死亡した日が3か月以上前であったとしても、孤独死等で知る機会がなかった場合は、被相続人が死亡したことを知った日から3か月以内に相続放棄の手続を行うことで①の要件を満たします。
また、「被相続人が死亡したことを知った時から既に3か月経ってしまったから、相続放棄はできないですよね」というご相談をいただくことがありますが、必ずしもそうではありません。仮に自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月経ってしまっていても、遺産は何もないと思っていたのに後々になって突然債権者から被相続人の債務支払の請求を受けた等の場合には、相続放棄をすることができる場合があります。
先述のとおり、相続放棄は非常に短い期限が設けられているため、少しでも迷っていらっしゃる方は気兼ねなく弊所までご相談ください。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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