企業法務コラム
余力のある組織づくり
更新日:2023/08/28
大規模な不況や、新型コロナウイルス等のパンデミックがあると、多くの組織が混乱します。経営が苦しくなった際に起こりがちな現象は、過度な効率化により組織の「余力」が失われ、想定外の事態への対応が困難になってしまうことです。効率化が絶対悪とは言えませんが、組織の強さは適正な余力によってもたらされる部分が大きいです。そして、この余力を「余裕」と捉えるか「無駄」と捉えるかは、評価が難しいところです。
例えば、人員について、現在の業務に必要な人材以外を「無駄」として組織の余力を切り詰めると、急に業務が増えた際に既存の人員に予期せぬ負担がかかり、人が必要なタイミングなのに辞職者が出てしまうという事態も起こりえます。
また、IT化などのイノベーションに取り組む人員がおらず、より大きな効率化を図ることができません。人員的な意味で「余裕」を持つことで短期的な効率よりも中長期的な視点での組織運営が可能となります。余力があれば、予期せぬ事態にも対応でき、また新たなチャンスにも対応できます。
一方で、人員を増やすこと自体は固定費の増加や人間関係の変化など、それ自体がリスクを伴うものでもあります。組織の「余裕」が過剰であれば、組織全体に対して悪影響になりえます。
強い組織は「余裕」でも「無駄」でもない適正な余力があります。新型コロナウイルスという未曾有の事態が終結を迎えつつある現在、良い事態にも悪い事態にも対応できる余力についてあらためて考える機会といえます。
【著者情報】
播摩 洋平弁護士
企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)
九州大学大学院法学研究科修士課程 修了
米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業
三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務
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