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企業法務コラム

「カスハラ」対策の必要性について

投稿日:
更新日:2023/09/26
 

近年、顧客(カスタマー)による企業やその従業員へのハラスメント行為が急増し、社会問題となっています。これらの行為は、「カスタマーハラスメント」(通称「カスハラ」)と呼ばれ、「パワハラ」や「セクハラ」に次ぐ職場のトラブルとして認知されるようになってきました。

厚生労働省が実施した「令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査」(以下「令和2年調査」といいます。)によると、過去3年以内に顧客から著しい迷惑行為を受けたと回答した企業の割合は19.5%、過去3年間に勤務先で顧客から著しい迷惑行為を経験したと回答した労働者の割合は15.0%に及びます。さらに、令和2年調査によると、過去3年以内に顧客からの著しい迷惑行為を受けた従業員の心身への影響に関し、「怒りや不満、不安などを感じた」と回答した者が全体の67.6%、「仕事に対する意欲が減退した」と回答した者が全体の46.2%に及ぶことが明らかとなりました。これらのデータから、「カスハラ」対策を怠ると、やっとの思いで採用した従業員が離職する契機となりかねないことがお分かりいただけるはずです。

この他にも、企業が「カスハラ」対策を誤ると、被害を受けた従業員から損害賠償請求を受ける可能性すらあります。ここで、保護者による教諭に対する理不尽な言動があった際に、当該教諭の管理監督者である校長に損害賠償責任が追及された事例(甲府地判平成30年11月13日)をご紹介します。同事例では、①保護者の理不尽な言動に押されてしまった校長が、②冷静に事実関係を精査することなく、③その場を収めるために、④教諭に対し、安易に謝罪するように求めたこと等が適示され、学校側が損害賠償責任を負うと判断されました。このように、「カスハラ」対策を誤ると、「パワハラ」や「セクハラ」と同様に、従業員から企業に対する損害賠償請求の原因となりかねません。

他方で、顧客から寄せられるクレームの中には、「正当なもの」や「企業が新サービスを思いつくきっかけとなり得るもの」も含まれており、顧客からのクレームを一律に切り捨てればよいというものでもありません。顧客からのクレームに悩んだ際は、まずは弊所の弁護士までご相談ください。弁護士が法的観点からクレーム内容を分析するとともに、必要に応じて再発防止策の作成にもご協力させていただきます。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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