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企業法務コラム

労働災害とカスハラ

投稿日:
更新日:2023/10/23

弁護士:大武 英司

 前月号で弊所の柏木弁護士がカスハラ(カスタマーハラスメント)についてのコラムを執筆いたしましたが、今月号ではこのカスハラを組織の問題として捉える必要性についてご説明いたします。

 先日、厚生労働省が精神障害の労働災害を認める基準にカスハラを加える方針を決めたとの報道がありました。つまり、カスハラを受けた従業員がうつ病となり、就労することが困難になってしまったようなケースにおいても労災が認められる運用にしていく方針です。カスハラを起因として労災という会社の問題として捉えられることとなります。

 そこで、カスハラ対策として事前に会社がとるべき対応策について考えます。

 まず、カスハラを受けた窓口担当者からの相談体制を整備する必要があります。そして、パワハラと同様、相談したことで労働条件上、不利益に扱わないことも求められます。

 また、カスハラが起きた場合の対応方法や手順を会社内で統一しておくことが必要です。マニュアルを作成し、それに従うよう指示を出しておくことも有用です。例えば、カスハラと考えられる事態に遭遇した場合、①相手の言い分を聴取する、②言い分の内容を検討する、③対応を決定する、という3ステップが考えられますが、①の聴取が不十分であると却ってカスハラがエスカレートしたり、事実を誤認してしまうおそれがあります。

 また、②においては、相手方の言い分が真実かどうかという問題や、本当にカスハラなのかという点が問題となります。全てがカスハラになる訳ではなく、むしろ会社にとって貴重な改善点の示唆となるような正当なクレームの可能性も十分にあるからです。

 これらのプロセスを経ないまま、窓口担当者が独断で③の対応決定をすることは極めて危険です。窓口担当者が対応決定する意思を有していなかったとしても、回答内容次第では、無条件に法的責任を認めてしまっていたり、必要以上の対応を求められる回答をしてしまっている可能性があるためです。

 弊所では、カスハラの問題についても随時ご相談を承っております。具体的にカスハラが生じる前段階においても、カスハラ対応に関する従業員研修を行っています。カスハラでは、現場での適切な対応力を求められるためです。ご興味がありましたら、弊所までお問い合わせください。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

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