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企業法務コラム

偽装請負のリスク

投稿日:
更新日:2023/10/23

 「偽装請負」とは、実態としては労働者派遣事業であるにもかかわらず、請負として契約を締結することを指します。

 「偽装請負」は、企業様の業種によってはあまり聞きなれない言葉であるかと思われますが、業種にかかわらず、知らず知らずのうちに偽装請負に当たり法律に抵触してしまう可能性があるため注意が必要です。

 実態は労働者派遣であるにもかかわらず請負として契約を締結した場合、労働者派遣事業において適用される労働者派遣法等の規制を受けないこととなるため、労働者の権利が害される恐れが高まります。したがって、偽装請負に対しては様々な罰則が設けられています。

 例えば、労働者派遣事業を許可なく行った企業に対しては、労働派遣法第59条第2号により、1年以下の懲役又は1 0 0 万円以下の罰金が科される恐れがあります。また、違法に派遣された労働者を受け入れ役務の提供を受けた企業(注文主)に対しても、改善命令や公表の措置が法律上定められています(同法第49条第1項、同法第49条の2第2項)。

 加えて、違法な派遣労働者を受け入れた企業(注文主)にとって最も注意を要する規定は、労働契約申込みみなし制度です(同法第40条の6)。この制度によると、注文主である企業は派遣労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなされ、派遣労働者がこの申込みを承諾した場合には、注文主である企業と派遣労働者との間で労働契約が締結されることとなります。

 それでは、自社が締結する請負契約が、偽装請負と認定されないために注意すべき点をお伝えします。

 請負とは、請負業者による仕事の完成を目的とする契約であるため、注文主である企業と労働者との間に指揮命令関係を生じないものです。したがって、請負業者としては、自社の労働者に対する業務上の指示は、注文主である企業から請負業者を通じてなされるような体制を整備するべきでしょう。具体的には、請負業者の管理責任者を置き、労働者に対する業務に関する指示は全て管理責任者を通してのみ行うよう求めることが考えられます。

 また、注文主である企業としては、自社の社員から労働者に対し、業務に関する直接の指示を行わないよう注意が必要です。加えて、上述のとおり、請負は仕事の完成を目的とする契約ですので、労働者の人数配置について指示することや、作業工程に関し仕事の順序や方法等の指示を行うことも避けるべきでしょう。

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【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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