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企業法務コラム

親事業者に下請法違反をされた場合の告発・通報による対処方法について弁護士が解説

投稿日:
更新日:2024/07/17

下請法違反とは?

 下請法(下請代金支払遅延防止法)とは、元請会社・親事業者との力関係により、下請業者・下請事業者が不利な状況に置かれること(いわゆる下請けいじめ)を防ぐ趣旨で作られた法律です。

 最近では、令和6年3月7日に公正取引委員会が日産自動車株式会社に再発防止などを勧告したことが話題となり、下請法に違反する行為に注目が集まっています。概要としては、日産自動車は、が「割戻金」という名目で下請業者への支払代金を実質的に減額する行為をしたとして、下請法4条1項3号に違反するものと指摘されたことが問題となりました。

下請業者の方々としては、いわゆる下請けいじめを受けた際に思い切って対応をとることも考えるきっかけになったのではないでしょうか。

 それでは、具体的にはどのような行為が下請法違反となるのか、また、下請法違反となる行為を受けた場合にはどのような対応ができるのか、以下、ご説明させて頂きしていきます。

下請法による親事業者の主要な4つの義務

 下請法には、親事業者に対し、以下の4つの主要な義務が課されています。

⑴ 書面の交付義務(3条)

 親事業者は、下請事業者に対し、委託契約後直ちに、下請事業者の給付内容、下請代金の額、支払期日など公正取引委員会が定める事項を記載した書面を交付しなければなりません。これは、口頭でのみ契約を取り交わすことにより、下請代金額等が不明瞭なままになるなどのトラブルが発生することを抑制するための規定です。

⑵ 書類の作成・保存義務(5条)

 親事業者は、下請事業者の給付の内容、給付受領日、下請代金額、下請代金支払期日等を記載した書類を作成し、2年間保存しなければなりません。これは、親事業者の違反の有無を後から検証できるようにするための規定です。

⑶ 下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)

 親事業者は、下請代金の支払期日を、下請事業者の給付を受領した日から起算して60日の期間内(かつ、できる限り短い期間内)にて定めなければなりません。これは、下請代金の支払を、検査未了などを理由に遅らせることを禁止するための規定です。

 この規定に違反した場合、給付受領日から起算して60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日をみなされますので、親事業者には⑷の遅延利息支払の責任が課されます。

⑷ 遅延利息の支払義務(4条の2)

 親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかったときは、下請事業者に対し、給付受領日から起算して60日を経過した日から支払をする日まで、公正取引委員会規則で定める率(年14.6%)の遅延利息を支払わなければなりません。

下請法違反による親事業者の主要な11個の禁止行為

 下請法4条には、以下の11個の主要な禁止行為が規定されています。これらの行為は、下請業者の同意を得ていたとしても、親事業者が優位な立場にいることを利用して同意させたものと捉えられて違法であると指摘される可能性があります。

⑴ 受領拒否の禁止(1項1号)

 親事業者が、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに下請事業者の給付の受領を拒むことは禁止されます。給付受領を拒むことを許すと、下請代金の支払期日が延期されることを許すこととなってしまうからです。

⑵ 下請代金の支払遅延の禁止(1項2号)

⑶ 下請代金の減額の禁止(1項3号)

 親事業者が、支払期日経過後に下請代金を支払わなかったり、下請事業者の責に帰すべき事由がないのに下請代金を減額したりすることは禁止されます。

⑷ 返品の禁止(1項4号)

 親事業者が、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、給付を受けた物を返品することは禁止されます。下請代金の不当な減額を禁止するための規定です。

⑸ 買いたたきの禁止(1項5号)

 親事業者が、下請事業者の給付内容と同種・類似の給付に通常支払われる対価と比べ、著しく低い下請代金の額を不当に定めることは禁止されます。

⑹ 購入・利用強制の禁止(1項6号)

 親事業者が、正当な理由なく、下請事業者に自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させることは禁止されます。利用強制の例としては、親事業者が指定する保険加入をさせたり、親事業者が指定するリース業者を利用させたりすることが挙げられます。これは、実質的な下請代金額減少を防ぐための規定です。

⑺ 報復措置の禁止(1項7号)

 親事業者が、上記⑴から⑹までの行為を理由に公正取引委員会・中小企業庁に通報した下請事業者に対し、取引を停止するなどの不利益な取扱いを取ることは禁止されます。

⑻ 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(2項1号)

 親事業者が、有償で下請事業者に値して支給した原材料等の代金を、下請代金支払期日よりも早い時期に支払わせることは禁止されます。

⑼ 割引困難な手形の交付の禁止(2項2号)

 親事業者が、下請代金の支払期日までに一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付して下請代金を支払うことは禁止されます。

⑽ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(2項3号)

 親事業者が、下請事業者に、自己のために金銭、役務等のサービスを提供させる行為は禁止されます。例えば、親事業者が下請事業者と取引をすることと引き換えに下請事業者の従業員の派遣を受けることなどが禁止されます。

⑾ 不当な給付内容の変更。やり直しの禁止(2項4号)

 親事業者が、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、給付内容を変更させ、又は給付受領後に給付をやり直させることは禁止されます。

親事業者に下請法違反をされた場合の対処方法

 親事業者に下請法違反をされた場合には、まずは公正取引委員会・中小企業庁に通報・告発することが考えられます。下請法違反行為をする親事業者は、下請事業者との関係では優位な立場にあることが多いため、直接下請事業者から違反行為を指摘したとしても、その是正がなされないことが大半です。

 このため、むしろ親事業者への立入検査権限、勧告・公表権限を持っている公正取引委員会に対して通報・告発をすることが有用です。これにより、親事業者の行為を抑止することが期待できます。

 とはいえ、そもそも親事業者の行為が下請法違反に違反するのかどうか判断することは難しいといえます。また、親事業者の行為を止めずに当該親事業者との取引をやめることとなったから、これによって生じた損害の賠償を求めたいといったケースもあります。

 このような場合には、ご自身の信頼できる弁護士にご相談をいただき、親事業者の行為が下請法違反行為といえるか、また、これによる損害賠償請求が可能かどうかといった点についてのアドバイスを受けると良いでしょう。

 また、建設業には下請法が適用されない等(下請法2条4項)、業界によっても異なりますので、その辺りも含めて、弁護士にご確認頂くのが宜しいかと存じます。

まとめ

 以上のとおり、下請法には親事業者の義務・禁止行為についての規定が多く置かれています。下請法は法律の中でもやや複雑な部類に入りますので、ご自身でお悩みになった際には、ぜひ弁護士にご相談ください。

 また、平時の取引において下請法違反行為がないかすぐに相談できるように、弁護士との顧問契約を依頼しておくこともお勧めいたします。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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