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企業法務コラム

【企業に必要なカスハラ対策】JR西日本のカスハラ対策を例に弁護士が解説

投稿日:
更新日:2024/08/02

はじめに
 2024年5月24日、JR西日本がカスタマー・ハラスメント(いわゆるカスハラ)への先進的な取り組みを始めたことが大々的に報道されたことをご存じでしょうか。カスハラへの対応には、各企業が頭を抱えている状態ですので、JR西日本の取り組みは参考となります。
 カスハラ対策としては、カスハラ対策マニュアルを策定したり、カスハラ対応研修を実施したりすることも有用でしょう。これに加えて、本記事をご覧の方の企業においては、JR西日本同様に、カスハラを受けた従業員が弁護士へ容易に相談できる体制の整備をすることをお勧めいたします。

JR西日本のカスハラ対策

JR西日本のカスハラ対策の内容

 JR西日本では、これまで酔っ払った乗客などから従業員への不当な要求や暴言・暴力といったカスハラに苦しんだ経験があることから、社内でカスハラへの基本方針を定めました。そこでは、「クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、従業員の就業環境が害されるもの」がカスハラとして定義されました。このようなカスハラの例としては、身体的・精神的な攻撃や威圧的・強迫的な言動に加え、無断で従業員を撮影・録画するなどのプライバシー侵害や名誉毀損に当たる言動などが挙げられています。なお、取引先・取引企業からの不当な要求もカスハラに含まれます。

 JR西日本は、2024年度中に、このようなカスハラへの対応マニュアルを作成するなど、従業員をカスハラから守るための施策を進めることを公言しました。

弁護士に相談する体制を整備

 さて、このようなカスハラ対策の中で最も画期的であったのは、従業員に専門の弁護士を紹介し、カスハラをした者への訴訟対応などを容易にする施策を採用したことです。従業員が弁護士に相談できる体制を整備することで、カスハラを受けた従業員が一人で思い悩んで退職することなどを防ぐことが期待できます。

 JR西日本は、カスハラへの訴訟支援も含め、弁護士への相談を容易にすることで、従業員の安全・人権を守るための積極的姿勢を社会に示しました。特に乗客からのカスハラが多く、カスハラへの対策を取ることが急務といえる業種といえますから、このような先駆的な方針決定に至ったといえます。

企業に必要なカスハラ対策

 JR西日本のように、昨今は、各企業にカスハラ対策をとることが求められています。例えば、カスハラ対応マニュアルの作成、カスハラ対応研修の実施など、従業員の対応の統一化も重要です。これに加えて、JR西日本のように、実際にカスハラに遭った従業員への法的支援を拡充することで、従業員の労働環境を守ることができるといえます。
 企業によっては、既に従業員による顧問弁護士への無料相談を可能としている会社もあるでしょうが、これからは、カスハラ対応を熟知した弁護士への相談をも可能としていく必要があるといえるでしょう。

カスハラ対策を行わないデメリット

 ところで、本当にカスハラ対応は必要だろうかと考える経営者もいらっしゃるかもしれません。「従業員個人の能力が高ければカスハラ対応に苦慮することもない。」、「うちは大企業ではないから、最後は経営者が対応すれば問題ない。」などとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 しかし、カスハラ対策を行わないと、以下のようなデメリットがあります。

⑴ カスハラ対応が統一的に行われないことで、カスハラをはたらく者が増長する

 カスハラ対応が統一的に行われない場合、カスハラをはたらく者は、カスハラ対応に習熟していない従業員を個別攻撃・集中攻撃し始めます。対応に不慣れな従業員であれば、不当な要求であっても通る可能性があると考えるためです。
 このように、カスハラ対策がないと、カスハラをはたらく者が増長することとなります。

⑵ 労働者が休職・退職するリスクが生じる

 また、カスハラ対応によって労働者が心身の健康を害し、休職・退職するリスクもあります。企業が何らカスハラ対策をしていないと、従業員個人がカスハラと立ち向かわなければならず、精神的に疲弊してしまう事例が多くあります。

 この場合、従業員が会社に対し、安全な労働環境を提供しなかったとして損害賠償請求をしたり、労働災害として扱われたりすることがあります。

 このようなリスクは、中小企業で従業員が少ない場合には、従業員ひとりの急な退職で事業継続が困難になるなど、致命的なリスクとなってしまいます。

カスハラ対策を弁護士に依頼するメリット

 このようなデメリットは、カスハラ対策を弁護士に委ねれば、以下のとおり、解消することが可能です。

⑴ カスハラマニュアル作成・カスハラ研修実施によるカスハラ対応の統一化

 弁護士にカスハラ対策を依頼し、カスハラ対応マニュアルを作成したり、カスハラ対応研修を実施したりすることで、カスハラへの対応を統一化することができます。これにより、カスハラをはたらく者を抑止することが期待できます。

⑵ 労働者が安全して労働に従事できるようになる

 万が一カスハラに遭った場合に、直ちにカスハラ対応に詳しい弁護士に相談し、訴訟支援まで得られる体制を構築することができれば、実際にカスハラに遭った場合に従業員を守る選択が取れます。また、従業員としても、カスハラに遭った際に企業が抱える弁護士に相談・依頼ができると知っていれば、安心した状況で労働に従事することができるようになるでしょう。

 これにより、職場環境を良い状態に保つことが期待できます。

⑶ 実際にカスハラが行われることを抑止する効力がある

 また、企業が「自社ではカスハラが遭った場合、従業員が直ちに弁護士に相談・依頼することができる。」と公表・表示することで、実際にカスハラが行われることを抑止することが期待できます。JR西日本の上記報道を見た方であれば、今後JR西日本でカスハラをしたら弁護士に訴訟提起されるかもしれないと感じて、カスハラと思われるような行動を自重するであろうと考えられます。
 例えば企業のホームページなどに「カスタマー・ハラスメントがあった場合には従業員には顧問弁護士への相談を可能としております。」と表示したり、企業が電話を受けた際に同様の告知をしたりすれば、強い抑止力を期待できるでしょう。

まとめ

 JR西日本は先駆的な取り組みとしてカスハラへの対応方針を定めて公表し、従業員への訴訟支援体制を構築しました。これから、同様の対応をとる企業は増えていくと想定されます。
 自社が大企業ではないからと後回しにすることなく、カスハラ対策に慣れている弁護士を顧問弁護士とするなど、早めの体制構築をお勧めいたします。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

本店所在地
〒105-0012 東京都港区芝大門1丁目1-35 サンセルモ大門ビル4階
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