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東京都「カスハラ防止条例」制定へ。内容・罰則について解説【北海道・三重でも検討】

投稿日:
更新日:2024/08/23

東京都の全国初となる「カスハラ防止条例」について

 2024年5月22日に、東京都が全国で初めて、カスタマー・ハラスメント(いわゆるカスハラ)に関するカスハラ防止条例を制定する方向で検討を始めたと報道されました。2022年2月に厚生労働省がカスハラ対策企業マニュアルを策定するなど、国家規模で社会問題化しているカスハラ問題について、地方公共団体による規制が進むことが想定されます。

東京都の「カスハラ防止条例」の内容

 東京都のカスハラ防止条例においては、カスハラを「就業者に対する暴言や正当な理由がない過度な要求などの不当な行為で就業環境を害するもの」と定義づけることとされる見込みです。東京都は、このようなカスハラについて、企業側が取るべき対策を示すことを目的としています。東京都内の企業は、カスハラ防止条例及びそのガイドラインに従ってカスハラ対策を行い、従業員を守ることが義務付けられるようになるでしょう。

 東京都のカスハラ防止条例は、官民問わず条例の対象とし、公共サービスを利用する役所の窓口利用者をもその対象としている点に特徴があります。国会議員や地方議員がその立場を利用し、公務員に対して過度な要求を行ってその就業環境を害することも、「カスハラ」に当たることとされます。

東京都の「カスハラ防止条例」における罰則

 東京都のカスハラ防止条例は、企業側に従業員を守るような対策・被害を受けた従業員の支援体制整備を求めることを主眼にしていることもあり、カスハラ行為をしたものに対する罰則は設けないようです。但し、ガイドラインにおいて具体的にカスハラ行為に該当するような行為を列挙し、それらを禁止行為として定めることが見込まれています。罰則がないとはいえ、禁止行為を具体的に定めることにより、そもそもカスハラが起きないように抑制効果を持たせることが狙いといえます。

 また、カスハラ防止条例は、あくまでも企業が取るべきガイドラインを示すに留まりますので、条例に違反してカスハラ対策を取らない企業に罰則が科されることもない予定です。とはいえ、企業がこのような体制を整備しないでいるままでは、従業員を充分に守ることはできませんので、パワハラ・セクハラなどの他のハラスメント同様に、ゆくゆくは、社会的にカスハラ対策を取っていない企業の方が少数化していくであろうことが想定されます。

東京都以外の自治体での取組み

 また、東京都以外の自治体でも、類似したカスハラ対策をとるよう企業に求める条例が策定されつつあります。このような流れは、いずれ全国化していくと予想されます。

北海道でのカスハラ防止条例の制定の検討や対策

 北海道では、2024年6月24日の会合を皮切りに、超党派議員が一致団結し、カスハラ防止条例の策定に動き出しています。まだ条例の素案が検討されている状況ではありますが、東京都同様に、カスハラを「客の要望や言動のうち長時間の拘束を伴うものや執ような繰り返し、大声、暴言、SNSへの個人情報の開示などによって就業環境が害されるもの」と定義づけ、これに対する対応策を企業に提示します。SNSへの個人情報開示は、従業員の氏名や容ぼうを勝手に公開して誹謗の言葉を記すような行為を指しますので、現代的な問題といえます。

 また、北海道のカスハラ防止条例においては、カスハラを受けた従業員や事業主用の相談窓口の設置がなされる見込みです。カスハラ対策を企業側だけに求めるのではなく、行政としてもカスハラ被害者支援をすることとなります。

 北海道では、2024年11月の道議会での条例成立に向けて議論が続けられています。

三重でのカスハラ防止条例の制定の検討や対策

 また、三重県においても、東京都の「カスハラ防止条例」策定の動きを参考に、カスハラ防止条例策定が検討されています。2024年7月19日には、具体的にカスハラ防止対策推進本部が設けられました。このカスハラ防止対策推進本部が、カスハラ防止条例策定を主導していくことが見込まれます。更に、2024年7月23日にはカスハラ防止対策検討懇話会を設け、各会の有識者から意見を求めてカスハラ防止対策について検討をするようです。

 三重県知事は、サービス提供者と消費者が対等であるという意識が社会に浸透していないことを嘆く発言をしており、今後意欲的にカスハラ対策を進めていくと考えられます。

企業におけるカスハラ対策の重要性

 このように、都道府県単位で、各地方公共団体によるカスハラ防止条例策定の機運が高まってきています。いずれの条例も、カスハラを具体的に列挙して禁止するとともに、カスハラを受ける可能性のある企業に対してその対策を取るよう求める内容となることが予想されます。セクハラやパワハラのように、法律で禁止されているハラスメント同様、今や社会現象というべきカスハラについても、国が統一的な法律を制定することも近いかもしれません。

 そのような時勢ですので、企業においても、具体的なカスハラ対策をとることが喫緊の課題といえるでしょう。条例が制定されたのちには、カスハラ対策を取らないこと自体が条例違反となってしまうかもしれません。このため、早期にカスハラ対策について検討し、整備をしていくことが必要とされます。まずは、カスハラ対応マニュアルを社内で検討してみたり、実際に起きたカスハラ事例を用いた研修を実施してみたりすることをお勧めいたします。大切な従業員を守るためにも、早期の対応をとりましょう。

合わせて読みたい:【企業に必要なカスハラ対策】JR西日本のカスハラ対策を例に弁護士が解説

まとめ

 以上のとおり、東京都を中心に、カスハラ防止条例についてご説明しました。同様の流れは各都道府県にも波及していくと想定されますから、東京都以外に会社をお持ちの経営者の方にも、早期の対応をとることをお勧めいたします。

 このためには、カスハラ問題に精通した弁護士を顧問弁護士にして平時の相談を容易にしたり、カスハラ研修に講師として招いたりすることを試してみてはいかがでしょうか。カスハラ対策についてお困りの方は、ぜひ、お気軽に当事務所までご相談ください。

【著者情報】

企業法務部 部長 福岡県弁護士会(弁護士登録番号:33334)

九州大学大学院法学研究科修士課程 修了

米国Vanderbilt Universityロースクール(LLMコース) 卒業

三菱商事株式会社、シティユーワ法律事務所を経て、現在弁護士法人グレイスにて勤務

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監修者

弁護士法人グレイス企業法務部

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