企業法務コラム
景品表示法とは?改正後の内容や禁止される広告表示・罰則について解説
更新日:2025/01/06
1.景品表示法(景表法)とは?
景品表示法といえば、皆さん一度は耳にしたことのある法律ではないかと思いますが、その詳細について理解している事業主・会社経営者は多くはありません。景品表示法(通称、景表法)は、正式には、「不当景品類及び不当表示防止法」という名称の法律であり、名称のとおり、①不当な景品類や、②不当な表示による顧客誘引を禁止する法律です。
景品表示法は、事業者が不当な顧客誘引をしてしまい、一般消費者がある種誤解したり、騙されたりして商品購入をしてしまう事態を防ぐ趣旨で制定されました。
以下では、景品表示法について、最新の改正内容も踏まえながら、解説いたします。
2.2024年10月に実施された景品表示法の改訂の内容
そもそも景品表示法は、2023年に一部改訂され、2024年10月からその適用がスタートしています。同改訂により、より一層、一般消費者が保護されるようになっています。
事業者の自主的な取組みの促進
まず、事業者が自主的に景品表示法違反の状態を是正した際に、自主的な是正取組みを評価する制度が制定されました。
確約手続の導入
まず、景品表示法違反の疑いを指摘された事業者が、自ら是正措置計画(消費者庁は、「確約手続」と呼称しています。)を策定して内閣総理大臣に申請し、その認定を受けたときは、当該違反に関し、措置命令や課徴金納付命令の適用を受けない制度(いわゆる確約手続)が導入されました(法26条以下)。
この制度により、景品表示法違反の状態を自ら是正することが促進されます。
課徴金制度における返金措置の弾力化
また、そもそも不当な表示をして景品表示法に違反した事業者には、課徴金が課されることとなっていたのですが、この点に関し、特定の消費者に対して不当表示による収益の一部を返金した場合、課徴金額が減額されることとなっていました。
事業者が、このような返金措置をより採用しやすくするように、返金時にいわゆる電子マネーによる返金をすることが許容されるようになっています(法10条1項)。
違反行為に対する抑止力の強化
更に、景品表示法違反の行為に対する抑止力も強化されています。
課徴金制度の見直し
まず、課徴金制度が見直されました。課徴金とは、不当表示をして景品表示法に違反した事業者に課される制裁金を指します。この課徴金は、概ね、違反行為があった期間の売上をベースに決定されるため、違法行為に基づく売上没収としての側面も有します。
この課徴金に関し、①売上不明な事業者の売上を推計する制度の新設、②違反行為から遡って10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある場合には課徴金の金額を1.5倍に加算する制度の新設がなされました(法8条4項から6項まで)。
罰則規定の拡充
加えて、不当表示による景品表示法違反行為に関し、直接刑事罰(100万円以下の罰金)を科する罰則規定が新設されました(法48条)。
これまでは直接的な刑事罰は置かれていなかったので、より、違反行為に対する抑止力が高まることとなります。
円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等
また、措置命令等の違法行為への法執行をより実現しやすくするための法改正もなされました。
国際化の進展への対応
まず、昨今の国際化の進展に対応するため、外国への措置命令等の送達制度が整備・拡充されるとともに、外国の執行機関に対する情報提供制度も新設されました(法41条から44条まで)。
適格消費者団体による開示要請規定の導入
加えて、適格消費者団体が、一定の要件を満たした場合に、事業者の表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるようになりました。事業者は、この要請に応じて情報を提供する努力義務を負います(法35条)。
ちなみに、適格消費者団体とは、消費者の利益のために、各種消費者保護法の規定による違法行為の差止請求権を行使する消費者団体を指します(消費者保護法2条4項)。
3.景品表示法の不当な表示の禁止について
このように、景品表示法は昨今も改正をされていますが、そもそもの景品表示法の内容についても、以下のとおり、ご紹介していきます。
まずは、不当表示禁止規定をご説明します。不当表示は、3種類の禁止類型が定められています。
優良誤認表示について
まずは、優良誤認表示です。優良誤認表示とは、商品等について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して他の事業者の提供する商品等よりも著しく優良であると示す表示のうち、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあるものを指します。
具体例としては、科学的に証明されていない効用を商品に表示することや、何ら根拠なく他の製品よりも有用であると表示した広告を掲載することなどが挙げられます。
有利誤認表示について
次に、有利誤認表示です。有利誤認表示とは、商品等について、実際のもの又は他の事業者のものよりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのあるものを指します。
具体例としては、例えば閉店セールとの表示を長期間継続しており、他店よりも有利な価格で購入できるとの誤認を生じ得る場合や、「実質無料」などと表示していながら実際には契約後に費用が発生する場合など、価格に関する不当な表示が挙げられます。
その他、誤認されるおそれがある表示の禁止について
その他、以下のような内閣総理大臣が指定する、誤認のおそれのある表示も禁止されています。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/
- ・無果汁の清涼飲料水等についての表示(昭和48年公取委告示第4号)
- ・商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公取委告示第34号)
- ・消費者信用の融資費用に関する不当な表示(昭和55年公取委告示第13号)
- ・不動産のおとり広告に関する表示(昭和55年公取委告示第14号)
- ・おとり広告に関する表示(平成5年公取委告示第17号)
- ・有料老人ホームに関する不当な表示(平成16年公取委告示第3号)
- ・一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示(令和5年内閣府告示第19号)
4.景品表示法の景品類の制限及び禁止について
続けて、景品表示法における景品類の制限及び禁止についてご説明します。商品を購入する際に景品が付されている場合、消費者としては、景品が高額であればあるほど、商品本来に着目せずに商品を購入してしまいがちです。このような商品以外の景品による不当勧誘を防ぐために、景品類の制限及び禁止がなされています。
景品表示法4条によれば、どのような景品類を制限し又は禁止するのかは内閣総理大臣が定めることができるものとされ、この規定に従って、制限・禁止に関する規定と、その運用基準に関するガイドラインが制定されています。これらの読解・理解は簡単ではありませんので、お悩みの際には、景品表示法の理解のある弁護士へのご相談をお勧めします。
5.景品表示法に違反した事例
さて、それでは、景品表示法に違反した事例としては、どのようなものがあるでしょうか。過去の違反事例についての情報は、消費者庁のHPにも掲載されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
違反事例としては、以下のようなものがあります。
- ① 食品の原材料に含まれていない原料を、商品名に入れ、あたかもその原料が当該商品に含まれていると優良誤認を起こすような表示をした事例
- ② 販売価格の横に、小売販売希望価格より高い価格を小売販売希望価格として併記することや、他店での販売価格ではない独自設定の価格を併記することで、あたかも実施の販売価格よりも有利であるとの誤認を起こすような表示をした事例
- ③ 商品の原産国を偽った事例
これらの事例は、報道もなされた有名な事例です。事例としては不当表示に関するものが多いですが、景品類規制違反の事例も存在しますので、ご注意ください。
6.景品表示法に違反した場合の罰則
さて、景品表示法に違反した場合の罰則としては、どのようなものがあり得るのでしょうか。違反した内容にもよりますが、以下のような罰則があり得ます。
① 措置命令
消費者庁・都道府県が、消費者からの通報・相談などを契機として景品表示法違反行為を認知した場合、事業者に対し、措置命令を出すことができます。措置命令が課された場合、報道や公表のリスクが生じてきます。
② 課徴金納付命令
また、景品表示法違反行為のうち、優良誤認表示及び有利誤認表示は、課徴金納付命令の対象となります。課徴金は、上記のとおり、違法な表示期間中の売上の一定割合を納付するよう義務付けるものですから、その効力は絶大です。
③ 刑事罰
更に、上述したとおり、景品表示法違反行為のうち、優良誤認表示及び有利誤認表示には、100万円以下の罰金という刑事罰が新設されました。上記の行政的な罰のみならず、今後は刑事罰も科される可能性がありますので、これまで以上に注意をすることが必要となってくるでしょう。
7.景品表示法について企業が注意すべきこと
さて、上記の景品表示法について企業が注意することは、景品表示法に違反する行為をしないことと、仮に違反行為と疑われる行為があった場合には、自主的な是正措置等を取ることでしょう。
企業が自社広告や自社製品・サービスの広告表示をする場合や、商品に景品類を付ける場合などには、必ず弁護士にご相談をするように留意してください。
8.景品表示法関係ガイドライン等について
特に、景品表示法については、法律は一般的・抽象的な記載をするに留まっており、多くの重要なルールが各種ガイドラインに落とし込まれています。自社において独自に判断することなく、外部の法律専門家の適時の助言を受けるようにしましょう。
思わぬところに、景品表示法違反の落とし穴は隠れています。
9.まとめ
以上のとおり、景品表示法についてご説明いたしました。景品表示法についてお悩みの方や、顧問弁護士を付けることをお考えの方は、ぜひ、当事務所にご相談ください。当事務所では、景品表示法に習熟した弁護士が複数在籍しておりますので、あなたからのご相談に、丁寧に対応させていだだきます。
監修者
弁護士法人グレイス企業法務部
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