企業法務コラム
顧問弁護士のいない会社のリスクと顧問弁護士の必要性について
更新日:2025/01/08
1.顧問弁護士のいない会社のリスク
皆さまの会社・事業には、顧問弁護士がいらっしゃいますか?
弁護士との顧問契約が結ばれていれば、平時から気軽に弁護士に相談することができたり、顧問弁護士から得た情報を会社・企業内に還元したりすることができるでしょう。また、トラブル対応を弁護士に任せて自社のサービス向上に注力することもできるはずです。
それでは逆に、顧問弁護士がいない場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか?以下では、まずこの点についてご説明します。
1-1. 法的トラブルへの対応が遅れるリスク
まず、法的トラブルへの対応が遅れるリスクが生じます。
例えば、あなたの会社の従業員が、営業の外回り中に交通事故を起こして他人に怪我をさせてしまったとしましょう。このようなトラブルが発生した場合、自社の判断のみで適時適切な対応がとれるでしょうか?
従業員個人が起こした事故だからと高をくくっていると、会社も民法715条に基づく使用者責任によって損害賠償責任を負うため、のちに訴訟提起されるかもしれません。また、今はSNSの時第ですから、会社のレピュテーション・リスクも考慮した迅速な対応が必要でしょう。
このように単純な交通事故というトラブル一つとっても、顧問弁護士がいれば適切な対応をすぐに知ることができるのに、対応が一手遅れることによって大きなリスクを負う可能性があるとお分かりいただけるかと思います。
1-2. 契約書の不備から生じる予期せぬリスク
また、契約書の不備から生じる予期せぬリスクも挙げられます。
例えば、取引先による競業を禁止していなかった場合に自社商圏内での競業をされてしまうリスク、いわゆる暴力団排除条項を入れていなかった場合に反社会的勢力と契約締結してしまったものの対応に苦慮するリスク、BtoCの契約であるのにクーリングオフの規定を置かなかったために制裁を受けるリスクなど、契約書の不備に伴うリスクは枚挙にいとまがありません。
顧問弁護士がいれば、契約書へ署名押印する前に弁護士にその内容のリーガルチェックを依頼することができます。この時点で契約書の不備に気付いて修正を求めることができれば、このようなリスクは大きく軽減するでしょう。
1-3. 労務問題への不適切な対応によるリスク
更に、労務問題が起きた場合に不適切な対応を取ってしまうリスクもあります。
多くの企業では、問題のある社員を解雇する場合に、法律上必要な手続を取っていなかったり、労働紛争として裁判所で争われたら無効となるような条件下で解雇手続を取ったりしています。
この点については、本来、専門家である弁護士に相談しながら、相当程度慎重な判断・対応を取るべきなのですが、顧問弁護士がいない企業では、これらの対応をおろそかにしてしまいがちなのです。
仮に解雇した労働者から労働紛争を起こされて解雇が無効だと判断されてしまうと、数か月~1年単位での賃金相当額の解決金を支払う可能性すらありますから、このリスクは非常に大きなものといえます。
1-4. 取引先や顧客との紛争におけるリスク
取引先や顧客との紛争時に適切な対応が取れないリスクもあるでしょう。
例えば上記のように、契約書の不備から取引先に競業をされてしまった場合や、顧客から商品に難癖を付けられて代金支払を受けられない場合などには、ご自身の会社では、どのような対応をとられるでしょうか?
会社経営者の中には、「俺が直接話を付ける。」と意気込んで自ら対応される方もいらっしゃるでしょうし、「信頼できる部下に対応を任せる。」といった判断をなさる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、いずれの対応にせよ、法的専門家の助言がないと、例えば相手方との対応が脅迫・恐喝といった刑事罰に触れる程度まで至ってしまうリスクや、口頭での不用意な発言を録音されたりメール等の文面で不適切な投稿をしてしまったりするなど、相手方に有利な証拠を取得されるリスクが残ってしまいます。
これらの紛争時には、早期の段階から顧問弁護士に相談して助言を得るとともに、必要に応じて弁護士に正式に事件を依頼して対応を一任する必要があるのです。こうすることで、法的リスクを最小化した上で適切な対応をとることができます。
1-5. 法改正への対応不足がもたらすリスク
また、法改正や新しい法律への対応不足がもたらすリスクも大きなものとなります。
ここ数年間ですと、公益通報者保護法が改正されたり、いわゆるフリーランス保護法が施行されたりしています。直近ですと、いわゆるカスハラ問題に関する条例が東京都を始めとする各地方公共団体にて制定されていますから、法律として整備される日も近いかもしれません。
これらの法改正や新しい法律に対する情報不足・知識不足によって、例えば「公益通報をするなどけしからん!秘密保持義務違反で懲戒処分を下す!」といった対応を取ったり、「フリーランスであって労働者ではないから、契約解除は事前告知なく行ってしまおう。」などと判断してしまったりすると、各種法令に違反する行為を知らず知らずのうちに取ってしまうこととなるのです。
やはり顧問弁護士を付けておくことで、これらの新法・改正法の情報をアップデートして自社のコンプライアンスを万全なものとしておくことが有用といえます。
2. 顧問弁護士の必要性について
さて、以上が顧問弁護士を付さないリスクのご説明でした。それでは逆に、顧問弁護士の必要性についてもご説明します。
2-1. 企業成長とリスク管理を両立
まずは、企業成長とリスク管理を両立できることが顧問弁護士の必要性といえます。顧問弁護士を付すことで企業の信用性が向上するとともに、契約書作成時など、交渉においてアドバンテージを握ることができるのです。
実際、契約書作成時に、「うちの顧問弁護士が、この条項だけは不適切だと言っているのですよ。」との一言で、契約書の内容を自社に有利に変更してもらうことができたとのお声もあるほどです。
2-2. 中小企業が抱える法的課題をスムーズに解決
次に、中小企業が抱える法的課題をスムーズに解決することも期待できます。
中小企業であれば、少ない従業員の労務問題がそのまま企業の存続に直結する問題となるなど、一つひとつの課題の重要度が大きいです。これらの課題をスムーズに解決できるのは、弁護士ならではといえます。
2-3. 法的トラブルを任せることでの安心感
また、上述したような法的トラブルを顧問弁護士に任せることで、経営者としては安心して自社の経営に注力することができるでしょう。一度ご経験された方ならよくお分かりになるかと思いますが、自社で「裁判沙汰」になりかねない事態が起きた場合の不安・ストレスは計り知れないほど大きいものです。
このような不安・ストレスは、顧問弁護士という普段から付き合いがあって信頼できる弁護士に対応を任せることによって、大きく軽減するでしょう。
2-4. スタートアップにこそ必要な法的サポート
上記のようなメリットは、スタートアップ企業にこそ必要な部分があります。
スタートアップ企業ですと、他の企業と比較して、一つの法的トラブルが会社の破綻を招いたり、知らぬ間に法律違反(場合によっては刑事罰のある法律違反)行為をしたりする事態を生じる可能性が高いです。このような事態を招くリスクを的確に減らすことが重要といえます。
2-5. 日常業務からトラブル対応まで幅広くカバー
このように、日常の契約書作成・契約書への調印などの業務から、緊急時のトラブル対応まで幅広くカバーしてくれるのは、顧問弁護士ならではといえるでしょう。やはり顧問弁護士がいない場合には、緊急時の対応をスポットで依頼するだけの関係になりますから、平時の日常業務のフォローまではしてもらえないのです。
この点も、顧問弁護士を付けるべき必要性を基礎付けます。
3. 社内に法務部門を持つ会社の顧問弁護士の必要性
ちなみに、社内に法務部門を持つ会社には、顧問弁護士が不要なのでしょうか?そのようなことは、全くありません。
企業内に法務部門があるということは、相応の件数、法務上の検討・対応を要する事象があるということを意味します。そのような検討・対応に際し、企業内に弁護士を1名置いて相談役とするように顧問弁護士を利用することで、法務部と弁護士との連携を図ることで、企業の法的リスクを大きく下げることができるでしょう。実際に企業内弁護士を1名雇用するよりも、顧問弁護士を依頼する方が費用も安価となります。
4.問題が起きてからでも顧問弁護士の契約は間に合う?
また、問題が起きてからでも顧問弁護士の契約は間に合うでしょうか?
当然ながら、間に合います。弊所でも、問題が起きたことをきっかけにして顧問弁護士の必要性にお気付きになり、契約のご依頼をいただくことがあります。ぜひ、実際の問題に対する対応と共に、顧問弁護士の契約もご検討ください。
5.まとめ
さて、以上のとおり、顧問弁護士のいない会社のリスクと顧問弁護士の必要性についてご説明しました。当事務所では、顧問業務に特化した企業部門を置いて、随時のご相談への対応をしております。ぜひ、顧問弁護士を付けることをお考えの場合には、当事務所へのご相談・ご依頼をお待ちしております。
監修者
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