問題社員・解雇についてお困りの方
問題社員・解雇についてこんなお悩みはありませんか?
中小企業が抱える経営上の課題で最も多いのは、労務問題です。
労働人口が少なくなるなか、優秀な人材をいかに定着させるかということが企業経営に直結します。
近年では、“問題社員”への対応について頭を悩ませている経営者様が多く、当事務所へご相談いただく場合にも下記のようなお悩みを抱えてご相談をいただくケースが多くございます。
問題社員への対応と辞めさせるための手順
近年、使用者と労働者間の問題が増え、特に会社が「対応に悩んでいる社員」についての相談があり、深刻な問題として抱える会社も少なくありません。「その社員を辞めさせればいい」と考えたとしても、その対応は非常に難しく、慎重に進める必要があります。
使用者が労働者の対応をする場合、労働法の知識をフル活用しなければなりません。十分な知識がないまま対応を行うと、致命的な問題に発展することすらあります。また、この問題は「こうすればいい」という一般的な解決策がないことが多く、「なぜその社員の対応に悩んでいるのか、対応が難しいのか」によって、採るべき手段も変わってきます。
以下では、より細かくケースを分けて詳しく説明をします。
問題社員のタイプと事案の特徴
問題社員に対する対応は、会社がその対応に苦慮している理由によって変わります。例えば、問題社員がどのようなタイプなのかによって事案の対応が変わりますので、どのようなタイプがあるのかご紹介いたします。
① 勤怠状況が不良である社員
遅刻や欠勤が多いだけでなく、近時は無断欠勤が続いた後、連絡がつかなくなり、もはや就労意思があるのかさえ分からなくなる社員についてのご相談が多くなっています。勤怠状況が不良であっても出勤はしてくるケースもありますが、近時は出勤どころか連絡すらつかなくなるケースが増えています。中には、無断欠勤の状態が一定期間続いた後に退職代行業者から突然会社に連絡が入るケースもあります。
② 健康状態が業務に堪えない社員
健康状態がおもわしくないために業務に堪えず、その配慮が必要なケースがあります。この場合、健康状態がおもわしくないものの、就労意思はあることが多いです。そのため、本人の意思と医師による診断書の内容等を確認し、就労の在り方を考えていく必要があります。場合によっては、休職を命じなければならないケースもあるでしょう。
③ 会社の秩序を乱す社員
典型例は、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントと評価し得る行為に及ぶ社員が挙げられます。また、業務上横領等、会社自体が被害者になるような行為に及ぶ社員も挙げられます。
これらは就業規則の懲戒事由に掲げているケースが多いことから、就業規則を確認し、適時適切な対応が求められます。また、それ以上にハラスメントの被害者や他の従業員に対する影響だけでなく、周囲のモチベーション低下等、会社全体に与える影響が大きい場合が多いです。
問題社員が及ぼす職場への影響
社員の問題行動等はそれ自体に対する指導や改善で済めばよいですが、その行動が職場に悪い影響を及ぼすケースが多く、むしろそれが深刻な問題となります。
会社という組織の中で発生した問題行動を野放しにすると、以下のような悪循環に陥ります。
- ・会社の規律が弛緩
- ・似たような問題行動が発生
- ・他の従業員の就労意欲やモチベーションの低下
- ・生産性が低下
- ・人材の定着率の低下
社員の問題行動はそれ自体も問題ですが、職場に波及する悪影響が最も深刻な問題であるといっても過言ではないのです。職場に波及する影響の典型例としては、パワーハラスメントが原因で多数の従業員が次から次に退職してしまうというケースが挙げられます。場合によっては会社の存立そのものにも関わってくる問題になり得ます。
従って、問題行動が発生した場合には、可能な限り早めに指導を行い、その是正・改善を図ることで職場の規律を維持し、就労環境に影響を与えないようにすることが最も重要といえます。
問題行動等への初期対応と改善指導
社員に問題行動や健康上の問題があった場合の初期対応について、よくあるケースをとりあげて説明します。
① 社員の勤怠状況が不良である場合の初期対応
遅刻や欠勤が多い場合には、当該社員に対し厳重注意を行う必要がありますが、懲戒処分として始末書の提出を求めることも考えられます。始末書を提出させた後も改善が認められない場合には、更に厳しい懲戒処分を出すことになるでしょう。遅刻や欠勤が多いからといって、過去に一度も懲戒処分を出していない状況で突然解雇することはできない点に注意が必要です。
また、無断欠勤が続き連絡がつかなくなってしまうケースもあります。もっとも、連絡がつかないことを理由に直ちに雇用関係を終了させることはできず、慎重に扱う必要があります。具体的には、少なくとも出勤を促す書面をお送りする必要があり、本人の近親者等の連絡先が分かるのであればそこにも連絡をすべきでしょう。いずれの方法によることもできなかったり、回答がない場合には内容証明郵便等で出勤するよう指示を出すか、連絡をするよう催告すべきです。当該労働者との連絡がつかなくなっている理由が、必ずしも就労意思の問題とは限らないためです(事故による消息不明等の可能性もあります)。
内容証明郵便等を送っても期限までに回答がない場合には、やむを得ず解雇とすることが検討されることになりますが、解雇は最終の究極手段になりますので、その場合には専門家に相談されることが望ましいです。
② 社員の健康状態が業務に堪えない場合の初期対応
社員の健康状態がおもわしくないために業務に堪えず、就労を継続させることが困難なケースがあります。
まずは、会社が当該社員と十分に話し合い、客観的に就労を継続することが可能なのか、部署異動による業務内容の変更で対応が可能なのか等を検討します。また、その際にはただ単に当該社員からの申告によるのではなく、医師作成の診断書を提出させ、産業医の意見を参考にしたうえで決定すべきです。
問題は、会社が業務を継続させることが難しいと考えているにもかかわらず、会社と当該社員とが話し合いで折り合わない場合です。この場合であっても、直ちに雇用契約を終了させるのではなく、休職を命じることにより、健康状態の回復を待ち、それでも回復を見ない場合にはじめて雇用契約の解消に向けた方法を考えるべきです。
③ 社員が会社の秩序を乱す場合の初期対応
会社の秩序を乱す行為は多岐にわたります。会社に対する横領行為や特定の職員に対するパワハラ行為はその典型事例です。
最終的には、会社の就業規則において懲戒事由に掲げられている行為であるか確認のうえ、懲戒処分を行うことが考えられます。しかし、そもそも「会社の秩序を乱す行為」が真に存在するのか、当事者や関係者からの聴き取りや客観的証拠の調査を行って事実の確認をする必要があります。
また、問題となっている行為が再発したり、他の従業員に対する悪影響が懸念される場合には、調査をして懲戒処分の内容を決定するまでは業務命令の一つとして自宅待機命令を出すことも有用でしょう。
退職勧奨の方法と進め方
退職勧奨とは、労働者に対し雇用契約の終了に向けた自発的な意思形成を働きかける活動をいいます。退職勧奨の重要な点はこの「自発的な意思形成」という点にあります。きっかけは労使間での話し合いであっても、最終的に退職の意思を自発的に固めさせることが退職勧奨であり、その程度を超えて退職の強要に至ってしまえばそれは退職勧奨とはいえず、不当な解雇と評価される事態を招きます。そのため、退職勧奨をどのように進めるかは非常に重要なのです。
退職勧奨の伝え方と注意点
自主退職を促すといえるためには、労働者の自発性が担保されていることが重要です。すなわち、「退職の強要」と評価されないよう注意が必要です。
まず、退職勧奨は誰が行うべきかという問題があります。これは労務環境によって適任者が誰であるのかを考える必要がありますが、代表者など経営判断ができる者が行うべきでしょう。そこに人事担当者等、他の者が同席することも考えられますが、あまりに数が多いといわゆる「圧迫面接」となり、自発性が担保されない可能性があるため注意を要します。
次に、退職勧奨を行う場所と時間ですが、他の労働者に聞かれない場所を選定することが重要です。そのうえで本人や他の従業員に与える影響を最小限にする時間帯を選ぶのが理想でしょう。例えば、業務時間の真っ只中に行うのではなく、その日の終業時刻直前に行う等は一定の配慮として考えられる方策といえます。
退職勧奨の回数や期間についても配慮が必要です。1~2回の退職勧奨であればともかく、多数回に及ぶ退職勧奨行為はもはや強要と判断される可能性が高まります。また、回数こそ少なくとも1回にあたり退職勧奨にかける時間が長きにわたる場合にも同じ強要と判断されやすくなります。
他方で、自発的な退職の意思形成と評価されやすい要素の1つに退職金を優遇することが考えられます。再就職に向けての支度金や一定額の賃金を補償することも有用でししょう。
解雇の種類と必要な手続き
問題社員が退職勧奨によって自主退職をしない場合などには、会社としては、労働者に対して解雇処分を下す必要が生じてきます。この場合には、のちに解雇が無効とされることのないように、極めて慎重な判断が必要となります。
解雇の種類と選択肢
解雇には、2種類あります。
普通解雇
懲戒解雇に相当する事由までは認められないものの、会社の一方的判断によって労働者を辞めさせるという場合には、普通解雇をすることとなります。この場合、一般的には、退職金の支払義務は無くなりません。
労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されていますから、①客観的に合理的理由に基づき、②社会通念上、解雇が相当であるといえる場合には、解雇が有効とされます。
懲戒解雇
問題社員の問題行動が犯罪行為に該当するなど、相当程度重大な解雇事由がある場合には、懲戒処分としての懲戒解雇処分を下すことも考えられます。なお、就業規則上に根拠がないと懲戒処分が下せないため、注意を要します。
この場合は、退職金の一部又は全部が不支給となることが多いでしょう。
解雇予告と必要な事前手続き
普通解雇をする場合には、労働基準法20条により、退職日の30日前に解雇予告をすることが必要となります。なお、即日普通解雇して退職させる場合には、30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことで、解雇を有効とすることができます。
不当解雇を避けるための注意点
のちに不当解雇であるとの指摘を受けないために、また、万が一不当解雇であるとの指摘を受けたときのために、以下の点に注意が必要です。
- ①注意・指導などを徹底しておき、これによっても事態が改善しないことを記録として残す
- ②問題社員の問題行動を記録化しておく(証拠の確保)
- ③解雇時の言動がパワーハラスメントなどと言われないように録音をする
- ④解雇時の解雇理由は、就業規則上に根拠を見出しておく(合理的根拠の準備)
- ⑤労災休業期間中とその後30日間など、解雇制限期間でないことを確認する
これらの点に注意しながら、適切なプロセスで解雇処分を下しましょう。
懲戒解雇の有効活用と実施プロセス
懲戒解雇は、退職金の不支給などを伴うこと・基本的には即日解雇となることなどから、労働者に対しては最も厳しい処分となります。このため、その有効性も非常に厳格に判断されますから、注意が必要です。懲戒解雇が有効となりうる場面について正しく理解することで、懲戒解雇処分を有効に活用できるようにしていきましょう。
懲戒処分の適用事由
懲戒処分を適用するためには、就業規則上に懲戒権限の規定があることが必須となります。就業規則には、通常、懲戒対象行為が広く列挙されていることが多いです。しかしながら、仮に就業規則上に懲戒対象行為として規定されていない問題行為が見られたとしても、懲戒処分は適用できないことに留意してください。
その上で、労働者が極めて悪質な問題行動をしていること(そしてそれが証拠として残っていること)があって初めて、懲戒解雇が可能となりえます。例えば、横領行為などの故意の犯罪行為によって会社に損害を与えている場合などが、懲戒解雇処分の適用例となります。
就業規則に基づく処分手続き
また、就業規則には、処分の前提として、労働者に弁明の機会を付与したり、事実聴取をしたりする手続を要すると規定がされている場合があります。このような処分手続きに違反して懲戒処分を下すことのないように注意しましょう。
特に懲戒解雇を下す場合には、のちに不当解雇であるといわれた場合に、問題社員に対して様々な方向から手を差しのべたけれども、懲戒解雇以外選択しえなかったのであると反論するために、必ず労働者に弁明・事実説明の機会を与えましょう。
処分内容の通知と説明方法
懲戒解雇処分を告知する場合には、のちに争いとならないように、解雇理由を網羅的に記載した解雇通知書を手渡しましょう。後から問題となった場合に解雇理由を追加することは許されていませんから、解雇の理由に当たる行為は網羅的に記しておいた方が良いです。
会社が実施すべき雇用契約と就業規則の整備
これまでご説明したとおり、普通解雇にせよ、懲戒解雇にせよ、解雇処分を下す上では就業規則にその根拠があることが、会社の主張を基礎付ける重要な要素となってくれます。
雇用契約書の重要項目と作成基準
そもそも雇用契約を結ぶ時点でいかなる雇用契約書を作成しておくかも重要となります。多くの会社では、労働条件通知書の交付をするだけで雇用を開始し、雇用契約書の締結をしていないかもしれません。
就業規則のみならず、雇用契約書にも非違行為・懲戒処分対象行為を列挙するなどしておく方が、のちに問題社員に対する解雇処分を下す際に、会社に有利に事態を進めることが期待できます。
就業規則の更新と社内通知
また、就業規則に懲戒事由が書かれていたとしても、そこに項目漏れがないかどうか、タイミングを見てその更新をしていくことも必須です。例えば昨今その種類が増えつつある「ハラスメント行為」については、時代に即して懲戒事由として追記をしていく必要があるでしょう。
就業規則にいかに適切な事柄が書かれていたとしても、社内での通知手続が守られていないと、就業規則の内容が無効となりかねません。労働基準法106条の規定に則り、就業規則を常時各作業場の見やすい場所へ掲示し又は備え付けるなど、社内通知にも気を配りましょう。
労働基準法に基づく規定の整備
また、解雇予告手当の支給など、労働基準法に基づく規定の整備も必要です。特に、解雇の有効性が争われた場合には、労働者は解雇無効を主張するとともに、労働基準法に違反する事項について主張・請求をすることが多いですから、社内の各規定を整備しておかなければ会社を守れません。
解雇後に、解雇無効と併せて未払残業代請求を受けることも多々ありますから、就業規則とともに、労働環境・労務管理の規定ごと見直してしまうことをお勧めします。
問題社員を辞めさせる場合に弁護士へ依頼するメリット
問題社員を辞めさせる場合には、使用者側の一方的意思表示による解雇か、退職勧奨によって社員の自発的な辞職による方法があり、後者の場合には退職勧奨を行うことが考えられます。
解雇の場合には、解雇相当の事由があるか、それに対して懲戒事由としての解雇を行う根拠が就業規則に定められているか、弁明の機会等解雇にあたって求められている手続が履践されているか等、法律上の課題がいくつも存在します。
また、退職勧奨の場合には、前述のとおり、退職の強要と評価されないよう、種々の配慮が必要であり、相当な方法でなされているかを客観的に審査することが必要となります。
これらの判断及びそれに基づく手続が適切になされるよう、専門家である弁護士に相談することがリスクを削減するうえで有用です。
問題社員に関するお悩みは弁護士法人グレイスへ
以上のとおり、問題社員を辞めさせる合法的な対応方法と守るべき手順についてご説明しました。問題となっている社員のタイプや事案によって、どのような手順をとるべきかは変わってきますから、お悩みの場合には、お一人で判断することなく、ぜひ、弁護士法人グレイスへご相談ください。現在の貴社の就業規則や雇用契約を確認したうえで、貴社にとって最善な対応策について、問題社員問題を数多く扱ってきた当事務所がご提案いたします。
当事務所が提供できるサービス
・就業規則の見直し
・問題社員への懲戒処分の言い渡し・退職勧奨への同席
・社内研修(ハラスメント研修、内部統制等)
就業規則の見直し費用 |
スポット:22万円(税込)〜 顧問契約あり:5万5000円(税込)〜 |
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問題社員対応に関する費用 |
スポット:22万円(税込)〜 顧問契約あり:事案の内容により、顧問料の範囲内で対応。 内容によっては、別途費用が発生します。 |
社内研修に関する費用 |
スポット:22万円(税込)〜 顧問契約あり:研修の内容により、顧問料の範囲内で対応。 内容によっては、別途費用が発生します。 |
*いずれの費用も内容によって、変動することがあります。
“問題社員”対応については、今後のリスク回避を含めて就業規則・雇用契約の見直し等を含めて長期的な社内体制の構築が必要です。顧問契約を締結いただくことによって、日頃の問題に対するアドバイスのみではなく長期的な体制構築のサポートが可能です。
まずはお気軽にご相談ください
賃金・残業代に関するご相談は、弁護士法人グレイスへご連絡ください。
お問合せについては、お電話またはメールフォームで受け付けております。
こちらは予約専用となっており、メール・電話での法律相談は行っておりませんのでご了承ください。
問題社員・解雇に関する疑問を弁護士が解説いたします!
当事務所では、上記のような問題社員・解雇に関するお悩みを抱える皆さまに向けて、雇い止めや懲戒解雇に関する情報を発信しております。現在対応を検討されている経営者様はぜひご活用ください。
経営者の方々が日々直面する「問題社員」についてどのように対応すべきなのか、逆にどのように対応すると問題になるのか、等について解説いたします。
雇止めについて弁護士が解説
多くの企業では、契約期間に期限が定められた労働契約を締結した従業員(いわゆる非正規労働者や契約社員と呼ばれる従業員、以下「有期労働者」といいます)が存在します。
2018.09.27
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元労働委員会事務局の弁護士がユニオン・合同労組について解説
皆様は、ユニオン・合同労組という言葉を御存知でしょうか?一般的に、合同労組とは、一定の地域等で企業の枠を超え、中小企業の労働者を主に組織し、個人加盟できる労働組合のことを言います。大企業であれば企業内組合があるところもあるでしょうが、中小企業では労働組合のないところの方がむしろ多いと思います。
2018.09.26
懲戒解雇が有効となるためには
解雇にも普通解雇、懲戒解雇、整理解雇等、いくつかの種類がありますが、そのうちの懲戒解雇は、あくまで懲戒処分としての解雇ですので、そもそも懲戒処分ができるのかという点が問題となります。
2018.09.25
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