賃料不払いによる賃貸借契約解除・明渡について
1.賃料不払いが発生した場合
賃借人が賃料を支払わない場合、賃貸借契約を解除し、不動産の明渡しを請求することとなります。
賃貸借契約書には、「賃料の支払いを1ヶ月分でも怠った場合、何らの催告もなく直ちに賃貸借契約を解除することができる。」や「賃料の支払いを怠った場合、物件内にある動産を処分し、鍵を交換することができる。」などの条項が記載されている場合があります。
しかし、賃貸借契約は継続的な契約であり、賃貸借契約を解除する場合には、当事者の信頼関係が破壊されていることが求められます。そのため、このような条項がある場合であっても、賃貸借契約を直ちに解除できるとは限りませんし、勝手に荷物を取り出すこともできません。
信頼関係が破壊しているといえる賃料不払いの期間は、一律に定まっているわけではありませんが、通常、2,3ヶ月程度は必要であると考えられています。
2.解除の意思表示
賃借人が賃料の不払いを一定期間継続した場合、賃貸人としては賃料不払いを理由として賃貸借契約を解除する通知を送ります。この際、後の手続きにおいて証拠化しておく必要がありますので、内容証明郵便で発送をしておくと安心です。
この通知書では、①賃貸借契約の締結したこと、②これに基づき物件を引渡したこと、③未払賃料額と、相当期間(2週間程度あれば十分です。)を定めてこれを支払うよう求めること、④支払わなければ賃貸借契約を解除すること、を記載します。
3.訴訟提起
内容証明郵便にて催告したにもかかわらず、未払賃料を支払わず、任意の退去にも応じない場合には、裁判手続きに移行せざるを得ません。
この場合、賃借人を被告として、通常は物件所在地を管轄する裁判所に、建物明渡請求訴訟を提起することになります。同じ手続きで、未払賃料の支払いを求めることもできます。
賃料の不払いを続ける賃借人のなかには、内容証明郵便や訴状を受け取らない人も多くいます。その場合には、物件の調査を行い、客観的な状況から賃借人が居住(占有)していることを確認し、裁判所に報告することとなります。
4.判決の取得と強制執行
明渡訴訟を提起し、勝訴判決を得た場合であっても、直ちに賃借人が退去するとは限りません。また、判決書をもって勝手に鍵を変えたり、物件内の荷物を取り出すことはできません。この場合、強制執行の申立を行うことになります。
裁判所に強制執行申立後、数日のうちに催告日が決められ、執行官が物件に赴いて催告を行います。このとき、賃借人が在宅しているか否かに関わらず、解錠のうえ、物件内を確認します。なお、この際には執行補助者という運送業者等も立ち会い、強制執行の日(断行日)に手配するトラックや人員を確定しておきます。
通常は催告の日から1ヶ月後に強制執行を行う期日(断行日)が定められます。断行日に執行官、運送業者等が物件に赴き、荷物を強制的に取り出し、明渡しが完了となります。
以上が建物明渡に関する一般的な流れとなります。裁判、強制執行の手続となると、時間を要し、さらに強制執行(断行)での明渡しとなった場合、物件の広さや荷物の量によりますが、相当高額な費用がかかることになります。
早い段階から弁護士がオーナー様の代理人として賃借人と交渉することで、裁判前又はその途中で解決に至るケースも数多くあります。
また、賃料不払いの事案であっても、第三者が物件を占有して占有移転仮処分(保全)の必要があったり、保証会社による代位弁済等による場合など、柔軟に対応しなければならない事案もございます。
オーナー様に生じる不利益を最小限に抑えるためにも、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。
著者:戸田 晃輔