相談事例
【110】解雇無効及び従業員たる地位確認の請求をされた事例
2020/02/24
相談分野
労務問題
業種
サービス業
1. 相談内容
小売業を営むA社は、パート社員Bを期間の定めを置いて雇用していた。
ところで、A社は業務量の低下に伴う売上減少の状況が続いていたことから、従業員のうち唯一のパート社員であったBに対し、勤務時間を短縮するかそれが厳しければ退職のうえ、より勤務条件のよい会社への転職を検討できないか相談をもちかけた。
ところが、Bはその翌日、A社に対し、解雇予告通知書を交付するよう求めた。A社はBが自主的な退職を選択したと捉え、A社の相談に協力してくれた以上「会社都合退職扱い」とした上で離職後の失業手当の受給を速やかに行えた方がBにとってもメリットであろうと考え、良かれと思ってBに解雇予告通知書を交付した。なお、実際は、A社にBを解雇する意思もなければ解雇した事実もなかった。
その後、BはA社が交付した解雇予告通知書を主たる証拠として、解雇無効及び従業員たる地位の確認を求めて、A社を相手取って、訴訟提起した。
ところで、A社は業務量の低下に伴う売上減少の状況が続いていたことから、従業員のうち唯一のパート社員であったBに対し、勤務時間を短縮するかそれが厳しければ退職のうえ、より勤務条件のよい会社への転職を検討できないか相談をもちかけた。
ところが、Bはその翌日、A社に対し、解雇予告通知書を交付するよう求めた。A社はBが自主的な退職を選択したと捉え、A社の相談に協力してくれた以上「会社都合退職扱い」とした上で離職後の失業手当の受給を速やかに行えた方がBにとってもメリットであろうと考え、良かれと思ってBに解雇予告通知書を交付した。なお、実際は、A社にBを解雇する意思もなければ解雇した事実もなかった。
その後、BはA社が交付した解雇予告通知書を主たる証拠として、解雇無効及び従業員たる地位の確認を求めて、A社を相手取って、訴訟提起した。
2. 争点
(1)A社による解雇の有無
(2)解雇の有無に関わらず、本件において、Bは「債務を履行することができなくなった」(民法536条2項本文)といえるか
(2)解雇の有無に関わらず、本件において、Bは「債務を履行することができなくなった」(民法536条2項本文)といえるか
3. 解決内容
A社がBに対して30万円余りを支払う内容で訴訟上の和解が成立。
4. 弁護士の所感
本件は従業員による残業代請求と並んで、労働紛争として最も多い類型の1つとなります。使用者側が、解雇無効と従業員たる地位の確認を併せて請求されるものです。
仮にも解雇が無効であったとすると、従業員たる地位が存続していることとなり、次に民法536条2項本文にいう「債権者(本件では使用者側)の責めに帰すべき事由によって(労働者が)債務を履行すること(本件では労働を提供すること)ができなくなったとき」に当たるかという点が必ず問題となります。
本件は、使用者側が一貫して解雇した事実を争ったことから、良かれと思って解雇予告通知書を交付したことをもって解雇の事実が認められるかが1つの争点でした。もっとも、解雇予告通知書が証拠として厳然と存在する以上、解雇を否定する事情を立証できない限り、「解雇の事実がなかった」という裁判所の判断を勝ち得ることは相当難しいといえます。
そこで、本件のより重要な争点は、上記経緯のもとでBが就労不能になったとまでいえるのかという点でした。A社としては、
(1)Bがすぐに他社へ就職したこと等から、就労不能以前に、そもそもA社での就労意思がなかったこと、
(2)A社はBに相談をもちかけたに過ぎず、就労を拒否した事情が一切存在しないこと等を主張しました。
結論としては、訴訟上の和解で決着がついたことから、判決となった場合にどのような判断がなされたかは分かりませんが、仮に判決となった場合には、「解雇はあったが、Bが就労不能になったとはまではいえず、民法536条2項本文の適用(いわゆる「バックペイ」の支払義務)はない」との判断がなされる可能性もあった事案と分析します。
しかしながら、どのような決着を見るにせよ、使用者側としては従業員に対し安易に「解雇通知書」や「解雇予告通知書」を交付することは避け、可能な限り弁護士にその当否を事前に相談されることが、本件のような紛争の事前予防として重要です。
仮にも解雇が無効であったとすると、従業員たる地位が存続していることとなり、次に民法536条2項本文にいう「債権者(本件では使用者側)の責めに帰すべき事由によって(労働者が)債務を履行すること(本件では労働を提供すること)ができなくなったとき」に当たるかという点が必ず問題となります。
本件は、使用者側が一貫して解雇した事実を争ったことから、良かれと思って解雇予告通知書を交付したことをもって解雇の事実が認められるかが1つの争点でした。もっとも、解雇予告通知書が証拠として厳然と存在する以上、解雇を否定する事情を立証できない限り、「解雇の事実がなかった」という裁判所の判断を勝ち得ることは相当難しいといえます。
そこで、本件のより重要な争点は、上記経緯のもとでBが就労不能になったとまでいえるのかという点でした。A社としては、
(1)Bがすぐに他社へ就職したこと等から、就労不能以前に、そもそもA社での就労意思がなかったこと、
(2)A社はBに相談をもちかけたに過ぎず、就労を拒否した事情が一切存在しないこと等を主張しました。
結論としては、訴訟上の和解で決着がついたことから、判決となった場合にどのような判断がなされたかは分かりませんが、仮に判決となった場合には、「解雇はあったが、Bが就労不能になったとはまではいえず、民法536条2項本文の適用(いわゆる「バックペイ」の支払義務)はない」との判断がなされる可能性もあった事案と分析します。
しかしながら、どのような決着を見るにせよ、使用者側としては従業員に対し安易に「解雇通知書」や「解雇予告通知書」を交付することは避け、可能な限り弁護士にその当否を事前に相談されることが、本件のような紛争の事前予防として重要です。
相談分野で探す
- 不動産問題
-
- 売買契約
- 賃貸借契約
- 土地建物の明け渡し