運送業 相談事例
ドライバーの労働時間の管理をどのように行ったらよいかが分からない。
ドライバーの労働時間は、残業代の計算の基礎になることから、必ず管理が必要です。
未払残業代の請求を受けた場合に、証明する方法がないと、請求がそのまま認められる可能性が高くなります。管理の方法は様々なものがありますが、タイムカード等の勤怠管理システム・出勤簿・デジタコ・運転日報により把握しておく必要があります。
労働基準法と改善基準告示の違いが分かっていないが、どうすればよいか。
労働基準法は、ドライバーに限らず、内勤者等の全従業員に等しく適用されるルールです。給与・残業代の計算は、労働基準法でカバーされます。他方で、改善基準告示は、ドライバーのみに適用されるルールです。ドライバーの過重労働を避ける目的で策定されています。拘束時間・運転時間・休息時間という概念は、労働基準法にはないものですが、改善基準告示により「上乗せ」して適用されます。
変形労働時間制を採用していることになっているが、導入している意味が分からない。
運送業で変形労働時間制を採用しているケースでは、1年単位の変形労働時間制・1ヶ月単位の変形労働時間制のどちらかが多いです。いずれも、繁閑の時期が明確になっている場合について、トータルで見た場合には残業代を節減できる効果があります。他方で、勤務シフトを事前に確定させる等の手間もあります。適切に運用ができていない会社は少なくなく、これらを考慮して運用を継続するか否かを決める必要があります。
ドライバーの労働時間を削減したいが、どうすればよいか。
2024年4月から、ドライバーの時間外労働が年間960時間までに縮減されます。そのため、労働時間の削減は重要なポイントです。
始業時刻・終業時刻・休憩時間について、ルールと実態がずれていないかを把握する必要があります。より具体的には、ドライバーごとに、運行経路等と比較して労働時間が過大ではないかを確認する必要があります。特に、待機時間・手待ち時間が長すぎないか・出庫時刻が早すぎないか・運送のルート設定に不審な部分は無いかかがポイントになります。
給与を歩合給で支払っており、残業代を別途に支払っていないが、問題はないか。
歩合給であっても、残業が発生する場合には残業代を支払う必要があります。これは、歩合給を残業代見合いで支払う運用があるとしても同じです。但し、歩合給を適切に運用すれば、残業代の支払額を節減することはできますので、歩合給制度自体が不可というわけではありません。
給与規程において、固定残業代制度を導入しているため、残業代を別途に支払っていないが、問題はないか。
給与規程に「XX手当は固定残業代とする」という記載をするだけでは足りません。実際に残業時間の管理を行って、固定残業代相当分を超える残業が発生している場合には、その差分を追加で支払う必要があります。また、固定残業代部分が多すぎる場合も、問題がありますので、何でも「固定残業代見合い」の手当にすることはできません。
労働条件通知書・給与明細と給与規程の内容が違っているが、問題はないか。
両方の内容を整合させる必要があります。整合していない場合には、どちらかの方が従業員に有利にできているわけですが、結論としては、従業員に有利な部分が個々にピックアップされて適用されてしまうためです。
固定給から歩合給に切り替えたいが、どうすればよいか。
歩合給は、客観的な指標で計算できるようにする必要があります。例えば、売上高・運転距離数・荷物数等の指標です。なお、歩合給のみの構成にしてしまうと、ドライバーの手取りが極端に少なくなることがあるため、通常賃金の60パーセントまでは、必ず固定額として保証する必要があります。そのため、完全な成果連動型の歩合給を採用することはできません。
ドライバーの飲酒運転が発覚したが、解雇はできるのか。
飲酒運転は、ドライバーという職業からして重大な問題ですので、飲酒運転が勤務内外であるかを問わず、解雇が認められる可能性が高くなります。但し、就業規則に解雇の規程があることが前提となるほか、一方的な即日解雇はできません。解雇をする場合には、事前に経ておくべき手順があるのです。
交通事故歴・飲酒運転歴がないものとして採用したが、事後的にあることが発覚した。解雇はできるのか。
いわゆる採用時の経歴詐称問題ですが、確実に解雇ができるようにするためには、採用面接時に過去の交通事故歴・飲酒運転歴を質問しておき、証拠に残しておいてください。このような質問事項は、書面化して手書きで回答してもらうことがよいでしょう。